宇都宮市「ギョーザ日本一」卒業します

 1世帯あたりのギョーザ購入額(総務省家計調査)で昨年、日本一の座を奪回した宇都宮市が「苦戦」を強いられている。今年1~7月の統計では首位の浜松市に大差をつけられ、逆転は厳しい状況だが、関係者は意外なほど冷静に受け止めており、「もう1位は“卒業”でいい」との声すら聞かれる。知名度の高さから、最近では県内外のイベントで引っ張りだこの宇都宮ギョーザ。「順位」へのこだわりを捨てた理由とは…。
出だし好調も…
画像 宇都宮市と浜松市の世帯当たりギョーザ購入額
 平成8年以来、15年間にわたり県庁所在地・政令指定市の1世帯当たりのギョーザ年間購入額調査で1位だった宇都宮市。23、24年にライバル・浜松市の後塵を拝したが、昨年は官民一体となった「奪還運動」を展開し、見事日本一に返り咲いた。
 しかし、今年は1月こそ1位と順調な滑り出しだったが、2~6月は消費が低迷。特に5月は16位と、過去に例がない落ち込みだった。例年売り上げが伸びる7月に久々の1位を記録したものの、7月までの累計は2位(1961円)。首位を走る浜松市(2554円)の背中は遠く、3位の京都市(1754円)にも追い上げられている。
「順位気にしない」
画像 況だった2013年の「宇都宮餃子祭り」 =宇都宮市の宇都宮城址公園
 予想外の「伸び悩み」だが、奪回運動を展開してきた協同組合「宇都宮餃子(ぎょーざ)会」の鈴木章弘事務局長は「(ギョーザの消費を呼びかけるなど)テコ入れするという話は出ていないし、そもそも(順位は)全然気にしていない」と語る。
 餃子会の目的は「ギョーザをきっかけに、東日本大震災で落ち込んだ宇都宮の観光・経済を震災前のレベルに戻すこと」だったといい、日本一奪回運動を通じて地元が盛り上がった。
 昨年11月に開かれた恒例の「宇都宮餃子祭り」では、過去最高となる2日間で14万2000人の来場者が訪れた。鈴木事務局長は「今後は消費量へのこだわりではなく、味や品質、サービスの向上を図って日本一のギョーザの街づくりに貢献したい」と話している。
実態に合わず
 冷静な受け止めは行政側も同様だ。餃子会の奪回運動をサポートしてきた宇都宮市都市ブランド戦略室の担当者は「そもそも総務省家計調査は、宇都宮のギョーザの消費習慣とリンクしていない」と指摘する。同調査では、スーパーやコンビニエンスストアなどで購入した金額を対象としており、外食消費は含まれない。市内に約80店がひしめき、有名店の行列が絶えない宇都宮の場合、「店で持ち帰り用ギョーザを購入し、自宅で食べる」スタイルが浸透しているが、これは外食扱いになるためカウントされない。
 別の市職員も「1位であるに越したことはない」としながらも、「たとえ2位でも3位でも、『宇都宮イコール、ギョーザ』という図式は広く浸透している。今後も自信を持ってPRしていく」と力を込める。
 10月4、5日には、北九州市で全国のご当地ギョーザを集めた「第5回全国餃子祭り」が開かれた。宇都宮市やライバルの浜松市をはじめ、過去最多の17都府県25地域が参加するが、こうしたイベントは各地で増加している。
 「全国にはたくさんのおいしいギョーザがある。これまで争ってきた都市とも協力して、ギョーザで日本を笑顔にしていきたい」(鈴木事務局長)。「量」で話題になった宇都宮ギョーザ。「質」で地域を牽引(けんいん)する時期に来ているかもしれない。(宇都宮支局 原川真太郎)

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