2年半前にたばこが大幅値上げとなって以降、比較的安価な「わかば」や「エコー」など「旧3級品」と呼ばれる銘柄の人気がじわじわと高まっている。喫煙環境が厳しくなりたばこ離れが加速する中、平成24年度の両銘柄の出荷本数は、統計を取り始めた平成2年度以降で初めてトップ10入りする見通しで、たばこ店も仕入れを増やすなどして対応。昭和の文豪など、さまざまな人物がくゆらせた紫煙に、再び注目が集まっている。
「わかばはありますか」。今月上旬、大阪市中央区の個人経営のたばこ店。男性店主が首を横に振ると、サラリーマン風の若い男性は、何も買わずにしぶしぶ店を後にした。
たばこは22年10月、過去最大の増税に伴い、1箱あたり60~140円の大幅値上げとなった。店主によると、値上げ以降、この店では旧3級品を求める客が3~4割増え、品切れになる日も多かったという。店主は「あわてて仕入れを増やして対応した。旧3級品の売り上げは年々増えているが、今年はさらに増加しそうだ」と話す。
たばこの販売数量は15年度に3千億本を切って以降、前年度比2~5%のペースで減り続けている。
日本たばこ産業(JT)や海外企業などの販売会社でつくる日本たばこ協会の統計によると、22年度と23年度の比較で、銘柄別ではトップの「セブンスター」が100億1400万本から85億4200万本に減り、シェアも4・8%から4・3%に下がったのに対し、「エコー」は26億7900万本から35億5800万本に増加。シェアは1・3%から1・8%に上昇し、順位が19位から8位にジャンプアップした。
22年の値上げで、旧3級品は一律60円のアップにとどまり、現在の価格(1箱20本)は200~250円。セブンスター(440円)などに比べて格段に安いことが、若い層を中心とした人気の復活につながったようだ。24年度は4~12月までの累計ではエコー8位、わかば10位で、年間トップ10入りする見通し。
値上げを機に、輸入たばこから「わかば」に切り替えた大阪市中央区の男性会社員(41)は「わかばは“おじさん”のイメージがあって吸っていなかったが、独特の風味があっておいしい。昔ながらの日本の味だし、今後も吸いたい」と話した。
旧3級品たばこ 葉の品質の等級が最も低い製品で、かつてたばこの等級が1~3級にランク付けされていたことに由来する。日本たばこ産業は現在「わかば」(250円)、「しんせい」(240円)、「エコー」(同)、「ゴールデンバット」(200円)の4種類を販売。芥川龍之介や太宰治ら文豪のほか、アニメ「ルパン三世」の人気キャラクター、銭形警部も好んだという設定で、品切れ騒動が社会問題に発展することもあった。