生涯現役と言われるようになった昨今、賃金が低下しても定年後も働こうと考えている人は多いようです。本記事では、このような人が知っておきたい給付金を6つ紹介します。
■70代前半でも3人に1人は働いている
総務省の統計によれば、2022年の高齢者(65歳以上の人)の就業者数は、912万人と過去最多に達しました。中でも、65歳~69歳の就業率は50.8%、70~74歳は33.5%にも達しています。つまり、60代後半は2人に1人、70代前半は3人に1人が働いている計算です。
働く理由は人それぞれですが、金銭的に不自由がなくても健康上問題がなく、やりがいを感じられるから働く、という人も一定数います。働くことで社会とのかかわりを持てるので、認知症をはじめとした病気の防止になるのも大きなメリットでしょう。
■働くシニアのための給付金6つ
定年後も働く場合は条件に当てはまれば給付金が受け取れます。自分がどのような給付金を受け取れるかは、勤務先の担当部署や最寄りのハローワークにも確認してみてください。
●給付金1:高年齢雇用継続基本給付金
定年後も同じ会社で働くが、60歳以後の賃金が60歳時点と比べて75%未満に低下した場合にもらえる給付金です。給付金額は賃金の低下率によって決まり、最大で支給対象月の賃金に対して15%相当。60歳以上65歳未満の人が対象です。なお、申請は勤務先の所在地を管轄するハローワークへの書類提出もしくは電子申請により行いますが、基本的に勤務先が対応するので、自分で何かをする必要はありません。
●給付金2:雇用保険の基本手当
65歳未満で働く意欲があるにもかかわらず失業状態にあれば、定年退職後でも受給できます。過去の雇用保険被保険者期間によって最大150日分受給できます。なお、定年後スキルアップのために勉強するなどの理由で、一定期間就職する予定がない場合は、受給期間の延長申請を行いましょう。離職日(定年退職日)の翌日から2ヵ月以内に、ハローワークに「受給期間延長申請書」と「離職票」を提出してください。
●給付金3:高年齢再就職給付金
定年後に基本手当をもらっていた人が再就職し、賃金が再就職前の75%未満に低下した場合にもらえます。60歳以上65歳未満の人が対象です。各月に支払われた賃金の最大15%の給付金が支給されますが、事業主を経由しての申請手続きが必要になるため、使いたい場合は勤務先の担当者に相談してみましょう。
●給付金4:再就職手当
定年後に基本手当をもらっていたが、所定給付日数の3分の1以上を残して再就職した人がもらえます。そのほかにも細かい条件があるため、自分が対象となるかはハローワークで確認しましょう。ただし、高年齢再就職給付金とどちらかを選ばなければなりません。
●給付金5:就業促進定着手当
再就職手当をもらった人で、再就職先の賃金が離職前の賃金に比べて低下した場合にもらえます。以下の条件をすべて満たせば対象となるので、ハローワークから届く支給申請書を提出してください。
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“5年延長案”は見送り 将来の年金いくらもらえる? 3つの案を検証
● 再就職手当の支給を受けている
● 再就職先に6ヵ月以上雇用されている
● 所定の算出方法による再就職後6ヵ月間の1日の賃金額が、離職前の賃金日額より低い
●給付金6:高年齢求職者給付金
65歳以上で失業状態にある場合は高年齢求職者給付金の対象になります。基本手当と同様に7日間(自己都合退職の場合はさらに2ヵ月)の待機期間があります。雇用保険の被保険者期間によって最大50日分受給できます。
■定年後も働くなら年金の繰り下げも検討
年金(老齢基礎年金、老齢厚生年金)は、何もしなければ原則として65歳から受け取ることになります。しかし、働いていて収入があるなどすぐに受け取らなくても良い事情があるなら、66歳以降75歳の間まで繰り下げをすることで、受け取れる年金を増やすことが可能です。
1ヵ月受給時期を繰り下げることで、受給額が0.7%加算されます。仮に75歳まで繰り下げたとすると、受給額が84%加算される仕組みです。なお、老齢基礎年金は65歳から受け取り、老齢厚生年金は繰下げるなど分けて受給開始することもできます。
健康に自信があり、将来の年金収入を増やしたい人にとっては積極的に検討したい選択肢のひとつと言えるでしょう。
■まずは給付金を確認しよう
60歳以上または65歳以上の人を対象に、求職(失業)・再就職・賃金低下などの際にハローワークからもらえる給付金を6つ紹介しました。それぞれ受給期限なども定められています。どんな給付金があるかを知り、速やかに手続きをして定年後の収入補填に役立ててください。
文・荒井美亜(金融ライター/ファイナンシャル・プランナー)
立教大学大学院経済学研究科を修了(会計学修士)。税理士事務所、一般企業等の経理を経験して現在は金融マネー系ライターとして活動中。日本FP協会の消費者向けイベントにも講師として登壇経験あり。