5月7日、宝塚歌劇団は宙組所属の生徒2名がこの日づけで退団したことを発表した。今回退団したのは、舞こころと陽彩風華。ともに104期生で、亡くなったAさんの1期後輩にあたる。 宙組は昨年秋に劇団員のAさんが急死したことを受け活動を停止していたが、先月13日に活動再開を発表。6月からレビュー公演が開催される予定だが、二人は舞台に復帰することなく、宝塚を去ることとなった。 Aさんの急死をめぐって、遺族側はかつてより上級生らからパワハラを受けていたことを主張。パワハラの存在を真っ向から否定する劇団側と争っていたが、事件から半年以上経った3月28日、ついに劇団が14項目のパワハラがあったことを認め、合意文書を締結したと明かした。 遺族代理人として会見を開いた弁護士によると、パワハラには宙組の幹部上級生4人、宙組上級生は3人、劇団プロデューサー2名、演出担当者1名の合計10名が関与していたという。それらの加害者から遺族への謝罪は手紙形式で行われたというが、うち3名からは手紙は提出されておらず、「提出しないと受け止めている」としていた。 同日、劇団を運営する阪急阪神ホールディングスも会見を開き「過密なスケジュールとパワハラ行為によって劇団員に負担を強いる運営をしていた」と猛省。時代風土に改め認識を変えていくことを宣言し、「新しい宝塚歌劇団に生まれ変わったと認めていただけるよう全力で改革に取り組んでまいります」としていた。その具体策として、4月1日づけで弁護士や大学教授などが助言する「アドバイザリーボード」を設置することを挙げていた。 しかし現実には、その会見直後の3月末に彩妃花、葉咲うららが退団を発表しており、今回の発表で退団者は計4人となった。立て続けに発生する退団者に、ネット上では「組織改革が進んでいないのでは」と疑問を持つ声も寄せられていた。 《運営側が未だに真剣に事を受け止め再発防止に取り組んでいない証拠ではないでしょうか 劇団の中では今までと変わらず若手生徒に不安と恐怖が有るのでしょう 劇団員の精神的軽減とケアに真剣に取り組まないと若者の夢を奪っていくことになると思います》 《宙組の問題をきちっとしないまま公演再開することに会社としての姿勢が理解出来ない。まだまだ内部ではおかしな状況なのかな?退団者が出ているではないか。一旦解散して作り直すべきだったよ。加害者はの処分も不明のままですか?》 そこで本誌は宝塚歌劇団に、現在の宙組をとりまく状況についていくつかの問い合わせを行った。 まず、今回発表された舞こころと陽彩風華の退団理由については、「退団理由につきましては、個人のプライパシー保護に鑑みて、回答を差し控えさせていただきます」との回答。 続いて、謝罪の手紙を出していないとされる加害者3名が、その後手紙を出したについては、「本年3月28日の会見でご説明を差し上げた内容以上のことにつきましては、回答を差し控えさせていただきます」と回答が。 そして、再発防止策の一環で設置するとしていた「アドバイザリーボード」について、具体的にどう運用されているのか尋ねると、次の回答があった。 「本年3月28日の会見でご説明を差し上げた内容、および当日配布致しました『再発防止に向けた取組(劇団の改革)について』に記載させて頂きました内容については、鋭意体制・システムの整備、意識改革の推進、サポート体制の整備を進めております。ご質問にあります外部有識者で構成されるアドバイザリーボードを2024年4月1日付で設置し、メンバーから容観的な視点に立ったご指導・助言を頂戴し、そうしたご意見の内容などをもとに具体的な施策を検討しているところです。その内容等につきましては、検討の進捗状況を鑑みながら、今後皆さまにもお伝えしていく所存です」 果たして、宝塚は本当に“生まれ変わった”のか。その真価が今後問われていくことになるだろう。