出版社の宝島社(東京都千代田区)が、「書店内書店」という新しい売り場作りに取り組んでいる。書店の一角に自社書籍のみを集め、雑誌の付録として付けているブランドもののかばんやポーチなどを姿見とともに並べて「ファション雑貨売り場」のような雰囲気を演出するのが売りだ。従来の「本好き」以外の来店者を増やすことを狙っており、今夏以降、全国各地の大型書店で本格的に実施するという。
書店内書店は4月12~5月5日、紀伊國屋書店福岡本店(福岡市)で試験的に実施。「宝島書店」という看板を掲げた広さ約66平方メートルの売り場に、人気ファッションブランドを特集したムック本や雑誌、文庫、新書、DVDなど同社の売れ筋商品約150種類を集めた。
商品の見せ方にも工夫を凝らす。同社は「コンテンツ(情報の中身)の一部」としてファッションブランドのムック本や雑誌にトートバッグやポーチ、小物入れといった付録を付けているが、それらの中身を取り出してハンガーラックを使って陳列。姿見も置き、客が衣服とのコーディネートを確認できるようにした。書店側も専属の担当者を置き、客の案内を行った。
売り場を企画した桜田圭子広報課長は、「書店に新しい客を呼び込むことを狙った。ファッションをきっかけに来店してもらうことで、ついでに一般の書籍や雑誌も買ってもらえるのではと考えた」と話す。
狙いは当たり、期間中の同店における宝島社書籍の売り上げは冊数ベースで通常期の平均と比べ約1・9倍にアップ。若い女性や家族連れなど客層も広がり、「固定客の開拓につながった」(桜田課長)と自信を見せる。
書店内書店が「集客装置」の役割を果たしたことから書店側からも感謝されたという。桜田課長は「iPad(アイパッド、多機能情報端末)などの登場で書店の経営は厳しさを増している。しかし、店頭に足を運んでもらえれば消費者は本や雑誌の魅力に気付くはず」と語る。
同社ではファッションブランドのムック本の新刊が出る今年8月をめどに東京や札幌、福岡など全国5都市の大型書店に「宝島社書店」を開設する方針。期間限定の売り場となるが、書店の活性化にもつながるため「いずれ常設していきたい」(桜田課長)としている。