宮城、宅地上げ幅全国2位 基準地価、仙台が押し上げ

国土交通省が19日発表した都道府県地価(基準地価)で、宮城県は三大都市圏以外で唯一地価が上昇に転じ、上げ幅は住宅地が全国で2位、商業地は4位となった。東北6県の平均は住宅地が2.3%、商業地が3.5%下落した。マイナスはそれぞれ15年連続、22年連続となったが、景況感の回復などで下げ幅は縮小した。
 6県と仙台市の平均地価と変動率は上表の通り。宮城の平均地価は、東日本大震災の復興需要と2015年の地下鉄東西線開業を控えた仙台市が押し上げた。仙台市は住宅地51地点のうち49地点が上昇、商業地も46地点中、41地点が上昇または横ばいだった。
 宮城は、被災した沿岸部でも松島町を除く14市町で住宅地が0.1~9.1%上昇。商業地も横ばいかプラスだった。
 福島は、福島第1原発事故による移転需要の高まりなどから、全国平均(住宅地マイナス1.8%、商業地同2.1%)より下落幅が小さかった。
 一方、人口減少や景気低迷などの影響で、青森の下落率は住宅地で全国1位、商業地で2位、秋田も商業地が1位、住宅地が2位となった。岩手、山形は下落幅が全国平均を上回った。
 調査地点別=下表=では、高台移転の進む宮城、岩手、福島3県の住宅地計9地点の上昇率が、全国の上位10地点に入った。トップは岩手県大槌町大ケ口の30.5%、2位も同町の桜木町で19.5%だった。
 商業地は、昨年全国1位だった石巻市役所近くの穀町(13.0%)が2位、JR仙台駅東口で再開発の進む宮城野区榴岡3丁目(9.5%)が8位となった。
 岩手の2地点と秋田の3地点は、下げ幅が全国の上位10地点に入った。花巻市大通り1丁目(マイナス11.2%)は4位、大仙市川目(同10.6%)は7位だった。
 東北の県庁所在地は、いずれも下落率が改善した。ただ、改善幅は住宅地で青森市が0.3ポイント、秋田市が0.4ポイント、商業地で山形市が0.1ポイントと小幅にとどまった。
◎被災地経済へ反映鍵/過度な上昇 復興に冷や水
 【解説】国土交通省が19日に発表した基準地価では、東日本大震災からの復興需要と経済政策「アベノミクス」などによる景気の回復基調に乗った仙台市の活況が鮮明に表れた。高台移転などが進む岩手、宮城、福島3県の沿岸部でも上昇傾向は続き、震災前の平均地価を超える自治体も出ている。今後、過度な地価上昇を抑え、被災地の経済再生にどう結び付けるかが課題になりそうだ。
 仙台市は、都道府県庁所在地別の上昇率で住宅地(2.7%)がトップ、商業地(2.1%)が3位となった。新築マンション、賃貸物件とも空室率は低く、需給バランスはいい。国交省地価調査課の担当者は「震災需要にとどまらず、経済全体がうまく回っている全国でも数少ない都市」と分析する。
 長期トレンドからも、仙台市の安定ぶりがうかがえる。2004年と比較した平均地価の下落率は住宅地が2.7%、商業地が0.2%にとどまる。宮城を除く5県では住宅地、商業地とも04年の5~7割に落ち込んでおり、その差は歴然だ。
 沿岸部の被災地でも高台移転や復興需要による地価上昇が続く。石巻市や気仙沼市、釜石市など6市町では、住宅地の平均地価が震災前(10年)を上回った。
 安倍政権は来年4月にも消費税増税の方針を固めているが、被災地には増税相当額を国が補助する給付金制度が適用され、住宅建設への影響は抑えられそうだ。宮城県内の不動産関係者は「災害公営住宅への入居が始まるまでは微増傾向は続く」と予測する。
 ただ、行き過ぎた地価の上昇は被災地の経済に冷や水を浴びせかねない。消費増税分が給付されても、地価が上がり続ければ元も子もない。
 一部の自治体では、資材不足などで災害公営住宅の建設に遅れが出始めている。一日も早く被災者に住まいを提供することが、地価上昇を抑える有効な処方箋といえる。(東京支社・門田一徳)

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