宮城、岩手7097世帯が再建「自力」 住民流出、計画再考も

河北新報社が東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島3県の沿岸37市町村を対象に実施したアンケートによると、住まいを失い、個別に住宅を再建した世帯数は岩手、宮城両県で計7097に上った。公的な住宅再建事業の遅れが背景にある。被災自治体では人口流出や、それに伴う移転計画見直しなど悪循環も生じている。
 主な市町の個別再建の状況は表の通り。福島県は、福島第1原発事故の影響で「不明」とする市町が多数だった。
 アンケートによると1月1日現在、宮城県内で個別再建した世帯数は4663。このうち1037世帯(22%)が、震災前に住んでいた市町村以外に住宅を建てた。
 岩手県内では2434世帯が個人で再建を果たした。震災前の居住市町村を離れて再建したのは517世帯(21%)となった。
 2186世帯が個別再建したと答えた宮城県石巻市の場合、市が門脇地区など5地区(対象1587戸)で進める予定の区画整理事業で、着工された地区はゼロ。造成完了時期も「未定」のままだ。
 遅れの理由について、市は「人員不足により事業の加速化が困難」(区画整理第2課)と回答した。集団移転や区画整理を担う技術系職員の確保が大きな課題となって立ちはだかる。
 移転事業計画の変更を余儀なくされる自治体も出ている。
 移転計画を「既に見直した」「見直す予定」と答えた自治体は、岩手、宮城両県の被災27市町村のうち15市町村。うち14市町村は移転対象世帯の減少に伴うものだった。
 減少の理由は「個人での移転が増えたため」(岩手県釜石市)「集団移転から災害公営住宅への変更の増加」(宮城県東松島市)など、時間の経過による住民の状況や意向の変化が多数を占めた。
 個別再建の加速は人口流出にも影響を及ぼす。震災前と比べた人口減少率が被災3県最大の25%に達する宮城県女川町。同町によると、個別再建をした400世帯のうち、町外で再建した被災者は341世帯(85%)に上った。隣の石巻市への移住が多いとみられる。
 町独自の再建支援策が、人口流出を加速させる皮肉な現象も表れている。町は2013年5月、津波浸水域で災害危険区域に指定されず、集団移転の対象外となった世帯への支援制度をまとめた。対象は町内で土地を購入し自宅を建てる世帯が中心だが、町外へ移る世帯にも最大200万円の利子補給を認めた。
 町は「町を出るといっても、もともとは町内で被災した人たち。支援ゼロというわけにはいかない」(復興推進課)と頭を抱える。

タイトルとURLをコピーしました