宮城のひとめぼれモテモテ30歳 「全国で最も支持されるコメ」に

宮城県が生んだ家庭の食卓でおなじみの銘柄米「ひとめぼれ」が今年、デビュー30周年を迎えた。粘り、つや、うま味、香りのバランスに優れているのが特長。高い汎用(はんよう)性から全国で最も支持されるコメとして、飲食業界にも定着している。

外食・中食用シェア4年連続トップ

 東京・内神田にある1964年創業の宮城郷土料理店「季節料理 竹仙」は、91年の新品種登録時から県産ひとめぼれを活用している。2代目店主で板前の瀬古英三郎さん(42)は「ひとめぼれなしに油麩(ふ)丼やはらこ飯はできない。ほどよいもちもち感と甘みがあって、コメのおいしさがうちの自慢だ」と強調する。

 農林水産省によると、外食・中食用米の販売量で、県産ひとめぼれは産地品種別割合が昨年6月末まで4年連続トップを維持する。

 竹仙は良質、美味な県産米の普及に協力しているとして、宮城米マーケティング推進機構(事務局・県みやぎ米推進課)から「おいしい“宮城米”米飯提供店」の指定を受けている。提供店に登録するひとめぼれ使用店舗は現在、全国で計約200に上る。

 昨年1月に開業したさいたま市の「おにぎりのありんこ浦和店」も、県産ひとめぼれのみで握った18種類のおにぎりを販売する。

 「どの具材にも合い、冷めてもおいしい。粘りが強すぎず、口の中で適度にほぐれる」と内海由紀恵店長。顧客からも「ご飯がおいしい。他では食べられない」との声が寄せられる。米穀卸業者が売り込みに来るが、銘柄は変えないという。

 県統計によると、本年産のひとめぼれの作付面積は4万2508ヘクタール。うるち米品種別作付け割合は73・7%を占め、2位のつや姫(8・7%)、3位ササニシキ(6・8%)を大きく引き離す。

 県産ひとめぼれは近年、4~5割が外食・中食向けに流通している。主食用米の需要が減り続ける今、業務用の取引先確保と販路拡大は重要さを増している。

 全国で900もの銘柄米が魅力を競う中、全農県本部の大友良彦本部長は「ひとめぼれは、それぞれの場所で最高のパフォーマンスを発揮できる銘柄だ。業務用としては最大の評価を頂いている」と胸を張る。

[ひとめぼれ]冷害の克服を目指し、宮城県古川農業試験場(大崎市)がコシヒカリと初星を交配して誕生させた。1991年に市場デビューし、県奨励品種に指定。県内作付面積は94年、当時主力だったササニシキを逆転し、2005年にピークを迎えた。東北を中心に県外でも盛んに生産され、米穀安定供給確保支援機構(東京)によると、全国の水稲品種別作付面積は12年以降、コシヒカリに次ぐ2位。

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