1リットル当たり144円50銭。資源エネルギー庁が調査した17日現在の宮城県のレギュラーガソリン平均小売価格だ。全国より4円安く、47都道府県で6番目に安かった。実は宮城は有数のガソリン安値エリア。仙台圏の流通環境の良さなどが背景にあり、ドライバーにとっては実にありがたい状況だが、業界からは安易な安値歓迎ムードにくぎを刺す声も上がる。
(報道部・村上浩康)
■全国超え1週のみ
2017年以降の宮城、東北、全国のガソリン価格の推移(グラフ)をまとめた。昨年1年間で宮城県が全国を上回ったのは1週(プラス10銭)のみ。それ以外は3~6円ほど安く推移した。6~7月の8週連続を含む10週は全国最安値を記録している。
なぜ安いのか。価格調査を毎週実施している石油情報センター(東京)に素朴な疑問をぶつけると、「都道府県や地域で価格差が生まれる要因は主に2点ある」と教えてくれた。
一つは、製油所や油槽所からの輸送コスト。太平洋岸に面し、大消費地の仙台圏を抱える宮城県には塩釜市を中心に元売り各社が多くの油槽所を構える。タンカーが運んできた石油製品を、コストを抑えて個々のガソリンスタンド(GS)に運べる。逆に海から遠い長野県、離島が多い長崎県などは必然的に高い。
もう一つはGS同士の競合による価格競争だ。県内約300事業所でつくる県石油商業協同組合の佐藤義信理事長は「人口が多い仙台圏は力のある大手が拠点を持ち、価格競争が激しくなっている」と説明する。
また、仙台圏で複数のGSを運営する業者の担当者は、価格競争の一因として大手資本が商業施設に併設するGSの存在を挙げる。「そうした店は本業の集客のため利益度外視で地域最安値を掲げる。近隣の店舗は追随して値下げせざるを得ない」と漏らす。
かつては元売りが系列店に販売しきれなかった余剰分を格安で業者間転売する「業転玉(ぎょうてんぎょく)」が市況の混乱要因とされたが、現在は大手統合による業界再編で減少したという。ただ、日本よりガソリンが安い韓国から輸入する動きもあり、わずかな利幅を求めて各社がしのぎを削る状況は続く。
■「最後のとりで」
一方で、佐藤理事長は東日本大震災の経験から、ライフラインとしてのGSの位置付けを強調し、安さに流れがちな消費者心理に苦言を呈する。
「各地で災害が相次ぐ中、ガソリンや軽油を供給するGSは生活を守る最後のとりでだ。会員はサービスの工夫で本当によく耐えて頑張っているが、平時は安い店に行き、緊急時だけ地元に求めるというのではやっていけない」
ハイブリッド車や電気自動車の普及で「ガソリン離れ」も進む。エネ庁の調べで、宮城県内の給油所は18年度末現在、630カ所。震災当時の10年度末から153カ所が姿を消した。「平時こそ、地域のライフラインの在り方を改めて考えてほしい」。佐藤理事長の訴えは切実だ。