宮城のワカメ、猛暑で不作の危機 種苗不足、県外から取り寄せ急場しのぐ

今夏の猛暑の影響で、宮城県沿岸のワカメ種苗の生育が思わしくなく、年末からの収穫期の品薄に懸念が広がりつつある。県内の養殖業者への主な供給元である塩釜市でも、従来の出荷先に行き渡らない状況に陥っている。不足分を県外から取り寄せて急場をしのぐなど漁業者の懸命の努力が続く。

県沿岸は岩手と並ぶ全国有数のワカメ生産地。数カ月間で収穫が可能になるまで成長するため、東日本大震災後に力を入れ始めた浜もある。
県内の養殖業者が栽培する種苗の7~8割は塩釜市内の5者が生産する。うち出荷量が最も多いスギハラの杉原茂社長は「例年になく種の育ちが悪い。気候のせいだから、どうしようもないが…」と苦り切る。
同社は糸を張った専用器具に6月に胞子を種付けしてタンクで育て、9月中旬に海へ投入。2センチほどの種苗に育て、10月出荷する。
今夏は専用器具に雑草が生い茂り、種苗が育たないケースが続出。試験的に市外の海に投入しても根付かず、落下する「芽落ち」が目立った。同社は海水温の高さと窒素やリン酸など栄養塩不足が原因とみる。
9月末の台風後に投入した種苗は生育が良好だ。台風前の分も器具の汚れを落として成長を促し、最終的には「例年の約6割」(同社)の種苗を確保。市内分は出荷したが、気仙沼、石巻両市や南三陸町の取引先に十分出荷できなかった。
同社は栽培も手掛け、種苗を約40センチ間隔でロープに挟んで海へ投入する作業は約1週間遅れた。最終日の今月中旬、同社作業場を訪れた県漁協表浜支所(石巻市)の関係者は「少しでも助かる」と余った種苗を受け取った。
同東部支所(同)も「全然足りない。寄せ集めている状態」と嘆く。岩手や徳島県鳴門産の種苗調達を図る浜もあるが「到着は12月らしい」と杉原社長。何とか鳴門産種苗を入手した塩釜の別の業者はさらに追加発注したが、届くかどうか不透明だ。
ワカメの収穫期は12月中旬~翌年4月。宮城県水産業基盤整備課によると、2017年度の県内生産量は1万412トンだった。「今期は例年の7割ぐらい」とみる漁業者もいる。

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