宮城の中学、修学旅行先は東京を敬遠 コロナで近場に変更、日帰りも

「県外の往来者との接触にナーバスな職場で、子どもの修学旅行先によっては仕事を2週間休まなければならない。他校の現状はどうなっているのか」。中学生の子どもを持つ医療機関勤務の父親(50)=仙台市青葉区=から「読者とともに 特別報道室」に疑問の声が届いた。

 取材を進めると、多くの中学校が新型コロナウイルスの影響で修学旅行の方針転換を余儀なくされたことが分かった。県内35市町村立の195校中、現時点で27校が中止を決定。既に実施したか、今後予定する167校は感染拡大が続く東京方面を避けるなど行き先や日程を変更し、感染が拡大すれば中止も視野に入れる。
 県内中学の修学旅行は従来、5月や9月が多く、東京ディズニーランドや国会議事堂など首都圏を巡るのが鉄板コースだ。
 35市町村教委によると、時期を9~11月に延期した学校が多い。目的地は、仙台以外の学校では約5割が県内を含む東北、約2割が栃木県(日光、那須など)や北海道函館市などに変えた。仙台の学校でも東北や北関東が主流だが、検討中も少なくない。県内の2校が当初の計画通り東京方面で調整する。
 修学旅行の実施判断は各校に委ねられているが、一部の市町村教委は(1)感染者数の多い地域を避ける(2)旅行会社と綿密に打ち合わせる-ことなどを校長に要請した。
 安心して修学旅行に臨んでもらおうと、生徒や保護者向けのアンケートや説明会に取り組んだ学校もある。
 11月上旬に広島を訪問する蔵王町宮中では6月上旬、保護者に行き先や時期などを尋ねた。公共交通機関の利用時間の短さ、感染者数の少なさなども考慮し、学校側が函館と広島の2案を作成。生徒へのプレゼンテーションの結果、多数決で広島に決まった。
 出発10日前までに広島県内で1日10人以上の感染者が出た場合は、中止する見込み。同中の関係者は「楽しいだけではなく、歴史的に何を学べるかを考えた。自分たちが暮らす地域を見直すきっかけにしてほしい」と願った。
 七ケ浜町のある中学は10月初め、南三陸町と山形へ2日連続で日帰り旅行する。
 中止を決めた27校でも、代替行事を検討する。亘理町のある中学では10月上旬、仙台市天文台(青葉区)や仙台うみの杜水族館(宮城野区)のバックヤードなどを見学する。教頭は「クラスの思い出づくりのためにも、あらゆる方法を検討した」と振り返った。
 調査を依頼した父親によると、子どもが通う中学では一度、東京から栃木に見直したが、感染状況を踏まえ、最終的に東北他県への日帰りで落ち着いた。
 父親は「学校で決まったことなので仕方がないが、県内の(東日本大震災の)被災地巡りもいいと思う。無理して県外に足を運ぶ必要はないのではないか」と話した。修学旅行後、父親が出勤できるかどうかは勤務先が決めるという。

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