東日本大震災により漁船の9割が大破、流失した宮城県内で、現時点で必要とされる漁船約6600隻を2013年度までに確保できる見通しになった。造船会社の増産態勢が整い、調達環境が改善してきた。壊滅的被害を受けた漁業の生産力回復が期待される。
宮城県は11年度、国の共同化支援事業を活用し、小型漁船など約2800隻を調達した。県内3カ所の施設保有漁協などが所有者となり、12年度内に漁業者に渡るとみられる。12年度は5~20トン級の漁船を中心に約200隻を調達する計画で、13年度内に漁業者に届く見通しという。
県内の震災前の登録漁船は約1万3500隻で、うち約1万2000隻が津波で被災し、約1500隻が操業可能な状態で残った。震災後は漁船保険の支給や寄付などを活用し、約2100隻が自力復旧した。
現有の計3600隻に今後の調達見込みを加えると、県内の漁船数は13年度までに計約6600隻に上る。県は漁船保険の加入状況を基に震災前に稼働していた船を約9700隻と推計しているが、県漁協が震災直後に実施した調査では組合員の3割が廃業の意向を示しており、県は「現時点で要望のある船はほぼ確保できる」(農林水産部)とみている。
必要な漁船の大半を占める小型漁船は、メーカーが増産シフトに入っているほか、船本体に装備を取り付ける艤装(ぎそう)も対応の迅速化が図られるなど、生産体制が回復してきている。一方で、5トン以上の漁船は造船所の復旧が遅れ、急増する造船需要に対応し切れておらず、供給に課題が残るという。