宮城の給食パン、100%国産小麦に 東北発の新品種登場で実現

宮城県学校給食会が供給する給食パンの原料となる小麦粉が本年度、県産と北海道産を5割ずつ配合して国産100%になった。東北では青森、岩手両県に続く「国産化」で、学校給食の地産地消を後押ししている。パン製造に適した小麦の新品種の開発と普及が進んだことが背景にある。

国産小麦粉100%のパンを頬張る児童=6日、仙台市泉区の向陽台小(写真の一部を加工しています)

新品種開発が後押し、東北で3県目

 宮城の給食会は県内35市町村のうち32市町村の小中学校などにパンを納入する。従来は外国産を5割ブレンドしていたが2021年度、国産100%を目指し製造委託先の県内2工場と試作を重ね、製法を確立した。

 試作で直面したのが、外国産に比べて弾力や粘りを生むタンパク質のグルテンが弱いため、生地が製造機械に付着したり焼き上がった形が崩れたりする課題。水分やイーストの量を調整し、こねる時間や速度を変える工夫で乗り越えた。

 コスト増で60グラムのパン1個当たり約2円の値上げを迫られ、給食会が1円分を負担すると決めた。会にとって年間約1000万円の支出増は小さくないが、大沼博之理事長(64)は「県産小麦粉を使ったおいしいパンを食べてもらいたい。食育の観点からも意味がある」と強調する。

 国産化の鍵となったのが、東北農業研究センター(盛岡市)が相次いで登場させた小麦の新品種だ。従来の品種は製麺に向く傾向があった。

 宮城の給食で使われる年間約500トンの小麦粉の4割を占めるのが県産「夏黄金(こがね)」。コシの強い生地ができ、膨らみやすいなど製パン適性の高さが特徴で、16年度に育成が完了した。

 02年度以降に県産比率を高めてきた岩手が16年度に100%を達成できたのも、グルテンが粘り強い「銀河のちから」が10年度に誕生したことが決め手となった。

 給食のパン国産化をさらに進めるには、小麦の生産拡大が前提になる。外国産小麦粉を使い続ける東北の給食会も「県産小麦の生産量が少なく確保が難しい」(山形)と課題に挙げる。

 東北では主にコメの転作作物として栽培されており、宮城県は夏黄金を奨励する。本格生産が始まった19年度に260ヘクタールだった作付面積は、従来品種からの置き換えとコメ余りによる転作強化で、22年度は432ヘクタールに増えた。

 県みやぎ米推進課は「製パン適性の高い品種を求める声は以前から強く、夏黄金の登場で新たな需要を開拓できる。製粉業者など実需側のニーズに応えられる作物として、安定した品質で生産できるよう取り組みたい」と説明する。

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