仙台国税局は3日、相続税や贈与税の算定基準となる1月1日時点の路線価を発表した。東北6県の標準宅地の平均変動率は前年比1・3%プラスとなり、8年連続で上昇した。新型コロナウイルス禍の行動制限緩和によって取引が活性化した。青森を除く5県で上昇し、4・4%伸びた宮城が東北の平均値を底上げした。前年に下落した岩手、秋田、山形3県が上昇に転じた。
[路線価]主要な道路に面した土地1平方メートル当たりの評価額で、相続税や贈与税の算定基準となる。対象は全国約32万2000地点(標準宅地)で、うち東北は2万1582地点。売買実例や不動産鑑定士の評価を基に算定し、一般的な土地取引の指標として国交省が毎年3月に発表する公示地価の8割程度の水準となる。国税庁のホームページなどで閲覧できる。
県別では宮城は11年連続のプラスとなり、上昇率は6年連続で全国3位を記録した。13年連続で下落が続いた岩手と秋田はそれぞれ0・1%、0・2%伸び、上昇に転じた。福島は0・4%、山形も0・2%のプラス。青森は0・3%下落し、14年連続のマイナスとなった。
6県の税務署別最高路線価の上位10地点は表の通り。10地点の順位に変わりはなかった。仙台、郡山、秋田の計7地点が上昇し、盛岡は下落した。山形、青森の2地点に変動はなかった。
トップは67年連続で仙台市青葉区の旧さくら野百貨店前の「青葉通」で、2・4%のプラスとなった。上昇幅は4年連続で縮小したが、市中心部の再開発需要が価格を底上げした。
上昇率が最も大きかったのは商業施設やマンションの建設が相次ぐ仙台市太白区の「あすと長町大通」で15・6%。7・7%で2位だったいわき市の「いわき駅前大通り」、5・3%で3位の多賀城市の「多賀城駅北線通り」を大きく上回った。
6県の主要商業地(12地点)で上昇したのは仙台、秋田、福島、郡山4市の4地点。盛岡市の1地点が下落し、青森や一関、石巻など7市の7地点は変動なしだった。
主要工業地(6地点)は仙台若林区卸町東4丁目のみ上昇し、青森市富田4丁目、酒田市両羽町などの5地点は変動がなかった。
仙台・あすと長町15.6%上昇 宮城県内、コロナ前水準を回復
仙台国税局が3日発表した2023年の路線価によると、宮城県内の標準宅地5934地点の変動率の平均値は4・4%のプラスとなり、11年連続で上昇した。都道府県別では北海道の6・8%、福岡県の4・5%に次ぐ全国3位。上げ幅は前年から1・5ポイント拡大し、新型コロナウイルス感染拡大前の高い水準に戻った。
県内に10カ所ある税務署別の最高路線価は6地点が上昇し、3地点が横ばい、気仙沼市だけが下落した。
仙台市内の3地点はいずれも上昇した。東北一円から人が集まる優位性に加え、東京や大阪などの大都市圏と比べ割安感のある投資先として、投資ファンドや不動産投資信託の資金が流れ込んでいる。
上昇率トップは仙台市太白区あすと長町1丁目の「あすと長町大通」の15・6%。JRと市地下鉄の二つの鉄路の駅舎と近接し、大型商業施設や医療機関がそろったマンション建設の好適地としてデベロッパーによる引き合いが強い。
最高価格は青葉区中央1丁目の旧さくら野百貨店前の「青葉通」。前年比2・4%プラスの1平方メートル当たり347万円となった。徳陽シティ銀行など金融機関の大型破綻が相次いだ1997年(345万円)の水準まで回復した。47都道府県庁所在地別の順位は前年と同じく10位だった。
仙台がけん引する形で多賀城市や大河原町など周辺のエリアも上昇した。一方、気仙沼市本郷の「県道26号通り」は1・8%減でマイナス幅を拡大。佐沼税務署管内の最高地点は、登米市迫町佐沼中江2丁目「市道中江飯島線通り」に変更となった。
不動産鑑定士の西山敦氏(仙台市)は「新型コロナによる行動制限が緩和されて市場が活性化した。テレワークなどで都市部を離れていた人たちも県庁所在地など利便性の高いエリアに回帰しつつある」とみる。
今後も仙台圏とそれ以外の地域で格差は広がるといい、「大崎市古川など小規模開発で土地取引が盛んなエリアもあるが、仙台圏とそれ以外の二極化傾向は続くだろう」と話した。