宮城・亘理地元企業、ホテルをオープン 震災から2年9ヵ月

 東日本大震災から2年9カ月の11日、大きな津波被害が出た宮城県亘理町の荒浜地区でホテル「マイルームわたり鳥の海」がオープンした。震災後、同地区で宿泊施設が営業するのは初めて。経営する原勉さん(73)=仙台市=は「大好きな荒浜の復興に力を尽くす」とにぎわい再生に挑む。
 震災前に閉店した鉄筋2階の元銀行店舗を購入。津波で約2メートル浸水した建物を5500万円掛けて改装した。延べ床面積は約400平方メートルで、シングル、ツイン計17室に食堂、コインランドリーなどを設けた。原さんは「3.11を忘れず、立ち向かっていく決意を示す」とオープンを震災の月命日に合わせた。
 地区の住宅再建は道半ばで戻った住民もまばらだが、復興業務に従事する作業員の長期滞在や釣り客などを見込み、ホテルの開業に踏み切った。
 約20年前、荒浜漁港の近くで会計事務所を開いた。1997年に地ビール会社に転換し、町特産のイチゴの果汁を使ったフルーツビールで高い評価を得た。
 津波で醸造所は全壊し、10基あった釜や醸造タンクも流された。「亘理の味を作り続けることが復興につながる」と廃業を思い直し、ことし1月、花巻市に新たな醸造所を構えた。醸造事業の傍ら、本社の登記を残した荒浜での新たな事業展開を模索していた。
 「荒浜は今、復興へ大きな夢を描くことができる段階にある。その一翼を担いたい」と原さん。ホテルの運営を任せられた長男敬太郎さん(47)は「にぎわいが戻ればいい」と笑顔を見せる。
 シングル1泊2食6100円。連絡先は0223(35)2777。

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