宮城・南三陸のUターン漁師が新ブランド立ち上げ 第1弾はカキの2商品「本物はシンプル」

宮城県南三陸町戸倉地区にUターンした若手漁師の阿部和也さん(38)が、水産加工品を中心とした新ブランド「FISHERMAN’S KITCHEN(フィッシャーマンズキッチン)」をつくり、第1弾としてカキの2商品を発売した。地元の食材が持つおいしさやストーリーの付加価値を育てたい考えだ。

 販売する「生姜(しょうが)香る牡蠣(かき)のこめ油漬け」は、身が詰まった地元産「戸倉っこかき」のうち、えぐみが少ない1年物のみを使用。うまみが引き立つよう米油で仕上げた。「まるごと牡蠣(オイスター)ソース」はカキをミキサーにかけて煮詰め、タマネギを加えた濃厚な味が特長だ。

 「年間を通して地元のおいしいカキを食べてほしい」と話す阿部さんは、両親と養殖業を営む。レシピは地元の同級生で料理人兼漁師の佐藤将人さん(38)と練り上げた。「本物はシンプル」をコンセプトに、今後の商品作りでも連携していくという。

 子どもの頃は船に乗るのが苦手だったという阿部さん。高校卒業後は関東の大学などで学んだ。東京や仙台市の広告会社で10年以上、営業や情報誌の制作、イベント運営に携わった。

 4年ほど前に脱サラして地元で家業を手伝い始めた。東日本大震災後、地元のカキ部会は過密だった養殖棚を減らす漁場改革を進め、環境配慮型の水産業を後押しする水産養殖管理協議会(ASC)の国際認証を国内で初めて取得。生産者の姿も誇りに思った。

「価値を埋もれさせず全国に伝えたい」1年半かけて商品開発

 一方、その努力や苦労が商品に反映されていないと感じた。「価値を埋もれさせず全国に伝えたい」。広告業界での経験も生かし、約1年半かけてブランディングと商品開発を進めた。

 フィッシャーマンズキッチンは海鮮が苦手な人、あまり海産物を食べない30、40代の女性をターゲットに据える。最初の2商品は、登米市の食品工場が相手先ブランドによる生産(OEM)で協力した。

 阿部さんは「海産物を中心に農産物や食品以外の商品展開も考えている。南三陸の素材の良さを届けられるよう、イベントにも出店して消費者との交流を増やしたい」と展望する。

 牡蠣こめ油漬け(180グラム3024円)と牡蠣ソース(175グラム1944円)は、フィッシャーマンズキッチンの公式サイトや南三陸さんさん商店街のさんさん市場で販売している。

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