宮城県が主導する仙台医療圏4病院の再編構想で、仙台赤十字病院(仙台市太白区)と県立がんセンター(名取市)を統合して名取市に整備する新病院の基本構想が14日、公表された。内科、産科など38診療科を設け、「救急車をすぐに受け入れる」などのコンセプトを掲げる。センターの研究機能は引き継がず、希少がんや難治がんの治療は未定。2030年度の開院を目指す。
病床は400床程度、緩和ケア病棟は設けず
新病院は日本赤十字社が運営。標榜(ひょうぼう)診療科(法令で公に掲げることが認められた科目)の35科に加え、独自に総合診療科、ゲノム診療科、臨床遺伝科の3科も設置する。コンセプトは他に「安心・安全な出産ができる」「最適ながん医療を提供する」「赤十字らしい」の3項目を打ち出す。
病床規模は400床程度。一般病床359床のほか、母体・胎児集中治療室(MFICU)6床、新生児集中治療室(NICU)9床を設け、ハイリスクな出産に対応する総合周産期母子医療センターの機能を仙台赤十字から引き継ぐ。
救急医療は仙台医療圏南部を管轄とする。「断らない2次救急」をうたうが、受け入れ態勢について、県保健福祉部は14日の記者会見で「現時点で明示できるものはない」と述べた。
がん医療は、国が指定する「地域がん診療連携拠点病院」として県内のがん政策に必要な機能を維持する。がんセンターが指定を受けていた、より中核的な役割を果たす「都道府県がん診療連携拠点病院」は県内に東北大病院のみとなる。
がんセンターが現在担う希少がん、難治がんの治療について、県は「勤務医の専門性による部分が大きく、現時点でやるやらないの線引きは難しい」と説明。緩和ケア内科を置く一方、現センターにあるような緩和ケア病棟は設けない。
職員数は850人程度を想定する。仙台赤十字とがんセンターでは正職員計1046人、嘱託職員など計217人が働いており(4月1日現在)、今後、意向調査が行われる見通し。
名取市長が支援表明「運営補助が必要」
仙台赤十字病院(仙台市太白区)と県立がんセンター(名取市)の統合新病院を名取市に整備する基本構想が示されたのを受け、山田司郎市長は14日、市役所で記者会見し「開院へさらに前進した」と準備を急ぐ考えを示した。市が新病院に運営補助金を拠出する考えも明らかにし「運営支援は持続可能な病院経営に必要だ。他病院への支援を参考にしたい」と述べた。
名取、岩沼、亘理、山元2市2町は2017年度から、2次救急医療を担う総合南東北病院(岩沼市)に運営補助金を拠出する。名取市は24年度予算で1711万円を確保し、支出の一部が国の特別交付税で措置される。市はこれを先例に新病院支援を検討する。
市は9月、新病院建設地となる植松入生地区4万7780平方メートルの取得費19億9000万円を用意。本年度中に地権者のNTT東日本から取得し、新病院側に無償貸与する。病院周辺の道路整備も進める。
また県が県立精神医療センター(名取市)の名取市内での建て替え案を示したことに「病院移転による市内患者の負担増が回避され、ありがたい方向性を示してもらった」と述べた。
県審議会の決議「重く受け止める」 宮城知事が談話
県立精神医療センター(名取市)の移転に関し「名取での建て替えが妥当」とした県精神保健福祉審議会の決議を受け、村井嘉浩知事は14日、「重く受け止める」との談話を出した。
これまで寄せられた声を踏まえて「名取への本院設置も選択肢の一つに示した」と説明。身体合併症患者への対応など審議会で課題が指摘されたことに関しては「引き続き、建て替えの方向性について検討を進めていく」と述べた。