宮城県山元町の農業生産法人GRAは11月、インド西部の高原地帯でイチゴのハウス栽培を始める。GRAのメンバーで、東日本大震災の津波被害を受けたイチゴ農家が現地で栽培技術を伝え、著しい経済発展で増えている富裕層向けに高級な日本型のイチゴを売り込む。「被災地からグローバル企業を出したい」と夢は大きい。
NECや各国で地域開発に携わるNPO法人ICA文化事業協会(東京)などとプロジェクトチームを設立。インドのマハラシュトラ州プネ近郊の農村で9月末、約330平方メートルの大型ハウスの建設に着手した。10月末に完成する予定だ。
11月中旬からは高設ベンチに現地の苗を定植し、水耕栽培を始める。生育の見通しが立てば、大粒で甘みの強い日本型のイチゴに品種改良し生産を拡大させる。
山元町の農家らGRAの社員が交代で現地に出向し、ICAの現地スタッフ4人に営農を指導。NECのIT(情報技術)を駆使し、同町からインターネットを通じてスタッフに直接指示を送る計画もある。
GRAの最高経営責任者(CEO)の岩佐大輝さん(35)は「現地のイチゴは小さくて酸っぱく、日本型のイチゴが富裕層に高く売れる自信はある。貧困層の就労機会の拡大も目指したい」と説明する。
山元町は津波で9割以上のイチゴ農家が被災した。岩佐さんは同町出身だけに「被災地からグローバル企業を出し『やればできる』と困難に立ち向かう力を現地に伝えていければいい」と抱負を語る。
GRA栽培オペレーション担当の鶴巻伸寛さん(45)=岩沼市=は11月上旬から約5カ月間派遣される。21年間勤務した大手家電メーカーを退職しての挑戦だ。出発を控え、山元町内の農園で研修を重ねる。「何が起こるか分からないが、不安よりも期待が上回っている」と話す。