宮城・被災地の基準地価、浸水域の一部でも回復

 基準地価が19日発表され、宮城県内の沿岸部では、東日本大震災で津波被災を免れた地域だけでなく、浸水した地域の一部でも地価が回復していることが明らかになった。被災した住民や企業の移転需要が、比較的被害の軽い浸水地域にも広がったことが主な要因だ。回復の程度にはインフラ復旧の進行状況などによる差も出ている。
 商業地で全国トップ(11.8%)の上昇率だった石巻市中心部の穀町。約2メートル近い浸水で昨年は14.8%下落したが、被災した市立病院の移転新築計画や民間主導の複数の再開発構想が周辺で浮上したことなどがプラスに働いたとみられる。
 市役所やJR石巻駅が立地し、もともと利便性が高い地区。市震災復興部の星雅俊部長は「中心部の活性化への期待感の表れだ」と評価する。
 ただ土地売買の動きはまだ活発化していないという。市内の不動産業者は「復興の先行きを見極めようと、様子見の地権者が多い」と説明する。
 約1メートル浸水し、昨年3.8%下がった気仙沼市の田中前2丁目は今回反転し、3.4%上昇した。被害が大きかった市中心部と異なり、多くの建物が残り営業再開も早かった。地元の気仙沼新中央商店会の赤間文弥会長(77)は「移ってきた人も多く、震災前に約20あった空き店舗はすぐに埋まった」と話す。
 住宅地でも、復旧が進んだ浸水地域の持ち直しが目立った。
 定川を逆流した津波で浸水した東松島市赤井川前二は昨年、13.3%の大幅下落となったが、今回は8.6%上昇した。
 部分復旧したJR仙石線の陸前赤井駅や幹線道路に近い利便性は定評がある。行政区長の青戸力弥さん(70)は「建売住宅の販売も相次いでいる。震災後に減った世帯数の回復につながればいい」と期待する。
 インフラの復旧が遅れると地価の回復は鈍い。亘理町吉田大谷地はJR常磐線浜吉田駅近くの好立地だが、2.4%下落。昨年(8.7%下落)に続くマイナスとなった。
 常磐線は相馬-亘理間が休止中。JR東日本が7月、比較的被害が少なかった浜吉田-亘理間の運転を来春に再開すると発表したが、地価調査には反映されていない。町用地対策課は「常磐線が運転を再開すれば地価が反発する可能性もあり、長く続く傾向だとは思っていない」と話す。

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