国土交通省が21日発表した2013年1月時点の公示地価は、東日本大震災の被害が大きかった東北3県のうち、宮城の上昇ぶりが際立った。下落率が大幅に縮小した岩手、福島は被災による代替地需要に依存するのに対し、仙台圏は商工業地、内陸部で幅広く需要が発生。震災2年を経てもなお、まだら模様で進む復興が地価のさらなるゆがみに直結している。
宮城の地価が上昇に転じたのは、住宅地は平成初期のバブル景気だった1991年(19.6%)、工業地は92年(0.1%)以来。けん引するのは震災後に人口増加が続き企業の進出が進む仙台市周辺と、沿岸拠点として津波被災者の移転需要が大きい石巻市だ。
両市は商業地も前年の下落から上昇に転じた。仙台は15年度に開業予定の市地下鉄東西線が押し上げ要因になっている。石巻は内陸や高台だけにとどまらず、津波浸水域でも地価が上昇した。
国交省地価調査課は「仙台の持つ吸引力が圏域に波及している。石巻は山側のほか、がれきが片付いて売りが出始めた海側にも需要が分散しつつある」と分析する。
一方、岩手と福島は住宅の高台移転など限定的な動きにとどまる。福島は住宅地の上昇地点がいわき市に偏在。主な購入層は長期避難する双葉郡の住民らで「しびれを切らした被災者が生活再建の場を求めている」(国交省地価調査課)。いまだ震災の影響は濃い。
全国的な地価の動向を見ると、下落基調から脱する動きが出始めている。年始以降の株高など「アベノミクス効果」で今後も強含みだが、復興過程の地価上昇は被災地にとって危うさをはらむ。
需給バランスの安定には災害公営住宅の建設、民間賃貸などみなし仮設住宅の解消が急務だ。加えて民需に乏しい沿岸部の地域経済再建を下支えし、原発事故による将来不安を除去しなければ、東北全体を見据えた持続的復興は実現できない。(解説=東京支社・元柏和幸)