東日本大震災では、過去に宮城県沖地震などが発生した複数の震源領域の断層が連動して滑ったとする解析結果を、筑波大の八木勇治准教授(地震学)のグループが12日、静岡市で始まった日本地震学会で発表した。特に宮城県沖の海域では蓄積されたプレート(岩板)境界のひずみが全て解消され、八木准教授は「想定されていた宮城県沖は起きにくい状態になった」としている。
グループは太平洋や北米などにある51観測点の地震波形データを使い、震源と周辺の断層の動きを分析。断層滑りのシミュレーションと、過去に日本海溝付近で発生した地震の震源領域を比較した。
東日本大震災の本震が始まってから20秒間は震源の東側で、過去に宮城県沖と連動したことがある三陸沖南部海溝寄りの震源領域で破壊が拡大した。破壊は100秒近く続き、この海域では断層が50メートルも滑ったとされる。
20秒から40秒にかけて破壊は震源の西側にも伝わり、2分30秒までに1978年と1897年に起きた宮城県沖地震の震源領域を破壊し尽くしたと結論付けた。断層が滑った量は15~20メートルと推定している。
通常は地震直後でも、ひずみが全て解消されるわけではない。今回は従来に比べて断層が滑った時間が長いため、ひずみが完全に解放された可能性が高いという。
八木准教授は「震災で宮城県沖地震2回分に相当するひずみが解放されたとみられる。従来のような周期で起きないと断定はできないが、起きづらくなったと言える」と話している。