東北一のイチゴ産地の宮城県で、タイへの輸出が本格化する。物流コストと商品ロスを抑えるため、生産者5者と食品商社などが連携して一定量を定期的に空輸し、現地の小売店まで保冷状態で運び、鮮度を維持する。関係者は「宮城をイチゴの輸出産地にしたい」と意気込む。
「もういっこ」「にこにこベリー」など
事業をまとめるJRアグリ仙台(仙台市)や県国際ビジネス推進室によると、今月上旬にも輸出を始める。5月末までの約4カ月間で原則週1回、640パック(1パック250グラム)を空輸する予定。期間中に約3万パック、出荷額は約1000万円を見込む。
生産者は山元いちご農園、燦燦(さんさん)園、一苺一笑(いちごいちえ)、ごえん(いずれも山元町)とみやぎ蔵王苺農園(蔵王町)。輸出するのは県産主力の「もういっこ」「にこにこベリー」など栽培する7品種の中で調整する。
収穫したイチゴは山元いちご農園の冷蔵庫に集め、保冷車で成田空港へ。バンコクの空港からは低温物流のノウハウを持つ食品商社アライドコーポレーション(横浜市)の協力で小売店へ届ける。統一した箱やシールで県産イチゴをPRし、販売価格は1パック1500円程度を想定する。
これまでにタイや香港などへの輸出に取り組む生産者はいたが、出荷量が安定せず物流費や店頭価格が上昇。保冷状態を維持できずに傷みが発生し、輸送中のロス費用を生産者が負担した例もあったという。
農林水産省によると、県内では2020年、亘理、山元両町を中心に計約360の経営体がイチゴを生産。作付面積131ヘクタール、出荷量4250トン、農業算出額56億円は、いずれも東北6県で最も多い。
タイで日本産イチゴは人気があり、粒が大きく甘みのあるタイプが好まれるという。東日本大震災後、被災農家4人で再出発した山元いちご農園の岩佐隆社長(67)は「国内需要は限られている。復興支援への恩返しの思いも込め、宮城のおいしいイチゴを海外に広げたい」と話す。
JRアグリ仙台の平田満ゼネラルマネージャー(42)も「今回の事業をきっかけに、県全体でイチゴの輸出産地化を進めたい」と今後を見据える。