宮城産カキ出荷始まる 復興の味、3度目の再出発

 宮城県産の生食用カキの出荷が15日、始まった。今シーズンの解禁は昨年に続き、猛暑の影響で2週間ほどずれ込んだ。各地の浜では早朝から、漁業者らが殻むき作業に精を出した。
 9月に完成した宮城県石巻市渡波の県漁協「万石浦鮮かき工場」では、漁業者と家族ら約200人が作業に当たった。はしりとしては大ぶりに育っているという。出荷を待ちに待った漁業者は「自信を持って食べてもらえる」と話した。
 東日本大震災後、3回目のシーズンを迎えたが、生産量の回復は遅れている。県漁協によると、来年3月までの生産量見通しは約1500トンで震災前の3分の1という。
◎特区適用、桃浦会社産も市場へ
 県漁協によると、主産地の石巻地方を中心とする中部地区では初日、昨年の3倍近い6.8トンが出荷された。入札では10キロ当たり平均2万3764円と、昨年を約1万2000円下回った。
 県漁協は「昨年は全体量が少なく、仲買人が高値を付けた。ことしはある程度まとまった量が出荷されたため、落ち着いた。決して安い値段ではない」とみる。
 入札では、システム更新でタブレット端末を導入。一部の仲買人の入札金額が反映されず、カキが買えなくなるトラブルもあった。
 今シーズンの生産量見通しは約1500トン。産地競争は激しく、仲買人は「早く2000~3000トンまで回復してほしい」と切望する。
 震災前に比べ、生産者は半分近くに減り、カキ処理場も整備を終えたのは3分の1程度。県漁協かき部会の高橋文生部会長(63)は「震災で壊滅的な被害を受けた浜の復興は時間がかかる。被災地で懸命に育てたおいしいカキを全国の人に食べてもらいたい」とアピールした。
 県が導入した水産業復興特区の適用対象となった石巻市桃浦地区のカキ漁業者と水産卸の仙台水産(仙台市)が出資する「桃浦かき生産者合同会社」も出荷を始めた。
 殻付き3.5トンとむき身450キロを独自ルートで仙台市や東京・築地市場に出荷。16日からスーパーに並ぶという。
 大山勝幸社長(66)は「今シーズンからが本格稼働。期待に応えられるよう頑張りたい」と意気込んだ。

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