宮城産乾のり価格高騰 有明海産の不作が影響 初入札会で平均単価4割上昇

宮城県産乾(ほし)のり「みちのく寒流のり」の価格が今月に入って急騰している。国内最大の養殖ノリ産地の福岡、佐賀両県で有明海産が記録的な不作となっていることを背景に、塩釜市で13日にあった今年の初入札会で平均単価が約4割上昇した。県漁協塩釜総合支所は「経験したことのない相場。有明産の回復は見通せず高値は当面続く」とみる。(塩釜支局・高橋公彦)

昨年11月に本年度初めて開かれた「みちのく寒流のり」の入札会。仲買業者らが品質を確かめた=塩釜市の県漁協塩釜総合支所

 同総合支所によると、13日の100枚当たり平均単価は昨年度を478円上回る1839円。前回の12月27日と比べても486円高い。16日現在、宮城を含む東日本の1月の平均単価は昨年度比で510円、瀬戸内は394円それぞれ上がっている。

 養殖ノリ生産は、秋に種付けして生育した「秋芽網」と、発芽後に冷凍保管して冬に張る「冷凍網」の二期作が主流。福岡有明、佐賀有明ともに本年度の秋芽網で「色落ち」が発生し、販売数と額は前年度から半減した。原因は赤潮や小雨による栄養不足という。

 宮城県ののり商社の担当者は「有明海の秋芽網が不作との話は昨年末に出回り、今年の全国の入札で平均単価が急騰した。県内でも大手が買いあさっている状態で、これまで見たことがない人が入札会場で増えている」と明かす。

 有明海では今月、冷凍網の入札が始まったが、佐賀の販売数は豊漁だった昨年の4分の1、例年の半分以下だった。今月中旬にまとまった雨が降り、一部に回復傾向が見られるが、本年度の販売数は前年度比で10億枚以上減って50億枚を切るという見方もある。

 宮城県産乾のりの昨年度の販売数は約2億6240万枚。近年は色落ちなどが続いていたが、本年度は海況が安定しており、高値も影響して2016年度以来となる4億枚超えの見通しが強まっている。

 佐藤宏己塩釜総合支所長は「燃油や資材費が軒並み高騰する中、高値が付いて県内の生産者は助かる。寒波の影響が心配だが、極端な色落ちがなく品質が保たれてくれれば高値が続くだろう」と話す。

[国内の乾のり生産]全国漁業協同組合連合会(全漁連)の2021年度の共販実績によると、国内の販売数と販売額はそれぞれ計約63億7204万枚と計約748億円。福岡有明と佐賀有明が販売数で全体の47・4%、金額で50・1%を占める。特に佐賀有明は21年度まで19年連続で販売数と販売額が日本一を記録している。東北唯一の生産地・宮城県の全国に占める比率は21年度の販売数で4・1%、販売額(26億3303万円)で3・5%となっている。

「値上げできない」嘆く小売り・飲食業者

 宮城県産乾のりの販売額急騰は、仕入れ価格の上昇となって小売りや飲食業にも影響を及ぼす。特に「一番摘み」などこの時期にしか取れない上級品は今を逃すと来年度まで手に入らないため、県内の業者が頭を抱えながらも原料確保を優先して仕入れている。

 県産の一番摘みを中心に扱う塩釜市の商社は例年、1月に1年分を仕入れるが、今年は想定量の7割しか買えなかった。男性社長(75)は「業界に入って50年以上になるが、こんな急騰は記憶にない」と話す。

 同社の売り上げの大部分は卸売り。百貨店向けのギフトは物価高騰で1割の値上げを考えていたが、のりの急騰で2割超の値上げを要請した。葬儀会社の香典返しは値段が合わず欠品にせざるを得ないという。

 社長は「のりの価格上昇が他業界や一般消費者に理解されていない。値上げによる消費者ののり離れも危惧され、仕入れ価格が上がった分全ては転嫁できてない」と肩を落とす。

 塩釜市浦戸諸島産ののりを扱う市内のおにぎり専門店は、1月ののり仕入れ価格が3割上昇。男性店主(53)は「価格は毎年上がっており、今年も原油高騰などで上がるとは思ったが、想定以上だ」と明かす。

 おにぎりは一個120~180円。光熱費や材料費の値上がりを受けて価格改定も検討したが、踏みとどまっている。男性店主は「地元産ののりを使っておいしく、安いおにぎりを出すのに強い思い入れがある。子どもが小銭を握りしめて買いに訪れることもあり、工夫を重ねて値段を上げないようにする」と語る。

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