県は、福島第1原発事故の風評被害で落ち込んだ外国人観光客数の回復を目指し、新たな誘客事業に乗り出す。県内の観光地に駐日外国人記者を案内してインタビュー収録に協力してもらい、県民の暮らしぶりと合わせ紹介する動画を制作する。動画投稿サイト「ユーチューブ」で公開するなどして、安全が確保されている県内の状況を発信。放射能への不安を払拭(ふっしょく)し、旅行意欲の喚起につなげる。
ターゲットは、仙台空港から直行便が運航されている韓国、台湾、タイ。日本で取材活動を展開するそれぞれの国・地域の記者ら約15人を県内の観光地などに案内し、放射線量が十分に低いことに理解を深めてもらう。
記者のインタビューでは、客観的な視点を持った第三者の立場から、ありのままの現状を母国語で語ってもらう。動画には、女性や子どもも通常の生活を送る様子を、観光資源などの紹介映像とともに盛り込む。動画サイトで公開するともに、DVDを作り海外の旅行会社などに送る。
それぞれの言語によるネットサイトも構築する。放射線量のデータや復興状況の写真を掲載。温暖な台湾やタイでは珍しい雪や紅葉、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録された和食も動画で紹介する。
好みの文化や風俗など、それぞれの国民性に合った県内観光ルートも提案。各国・地域から旅行会社計15社の担当者を県内に招き、新たな旅行商品を売り出すよう要請する。
観光庁の宿泊旅行統計調査によると、原発事故が起きた11年に三つの国・地域から県内を訪れた観光客は1万4400人で、10年実績の24.2%まで激減。12年も38.6%にとどまった。県は策定中の第3期みやぎ観光戦略プラン(2014~17年度)で17年度までに10年水準に戻す目標を掲げる。
県は開会中の県議会11月定例会に3645万円の関連予算案を提出している。村井嘉浩知事は定例会で「風評の払拭に向け、より説得力のある映像やサイトを活用し、効果的に安心感や魅力を訴えたい」と説明した。