宮城県宿泊税条例が成立

 宿泊税条例は多くの「?」を残したまま成立した。審議が進むほど、県の説明はほころびが目立った。宿泊事業者らの「共感と納得が足りない」という声を脇に置き、曖昧な論法を突き通した県の姿勢を議会が受け入れた形となった。

 不信感を生んだのは、丁寧さに欠ける事業者への説明だ。県は徴税義務を怠ると科される拘禁刑や罰金についての説明をしていなかった。「伝えるべきだった。痛い指摘だ」と県幹部が認める始末だった。

 県が宿泊税導入の根拠とした「事業者7割が理解」との調査結果も、村井嘉浩知事が「職員の主観も入った」と訂正した。「現場が知事に忖度(そんたく)したんじゃないか」とやじが飛ぶほど各議員があきれていた。

 十分な財源を確保しても、観光客とじかに向き合う宿泊事業者の協力や信頼がなければ、魅力ある観光振興策は実現しないだろう。

 新たな課税は重い権力行使であるはずだ。説明不足を放置し、ずさんな根拠で課税するならば、県という権力機関の正当性が揺らぐ。他の事業にも不信の目が注がれる結果になる。議論を仕切り直すのが筋ではなかったか。

 最大会派「自民党・県民会議」の各議員は質疑で不満をぶつけてはいた。会派には会期中も各地の事業者から拙速な導入に反対する声が多く寄せられたが、結局は元自民県議の村井知事を後押し。県政与党の立場を固守した。

 生煮えの議論を見過ごすなら、二元代表制をうたう県議会の存在意義とは何なのか。疑問が深まるばかりの定例会となってしまった。(編集部・鈴木悠太)

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