宮城県産水産食品、新たな販路開拓先はメキシコ 「410年ぶりの悲願」と言われる理由は?

水産加工品などの海外販路開拓に取り組む宮城県が、新たな照準をメキシコに定めた。日本食レストランが世界有数の多さにもかかわらず国産食品の輸出実績は少なく、伸び代の大きさに期待が高まる。さらに歴史をひもとけば、県にとってメキシコ進出は「410年ぶりの悲願」とも言えそうだ。その理由は-?

来年1~2月に第2の都市で初の県産品フェア

 県は来年1~2月、メキシコ第2の都市グアダラハラで初の県産品フェアを開く。サケの煮付けの缶詰などを出品するマルヤ水産(亘理町)の千葉卓也社長(42)は「輸出先として想定していなかった国だが、未開拓の市場だからこそチャンスがある」と語る。

 農林水産省の2023年の統計によると、メキシコの日本食レストランは7120軒で、中国、米国、韓国、台湾に続いて世界第5位。一方、日本からメキシコへの輸出額を見ると国・地域別で農産物32位、水産物29位と、日本食の浸透ぶりと大きな差がある。

 県国際ビジネス推進室は「日本の食品は米国経由などで入っていると思われるが、輸送費などで相当割高になっているだろう。直接輸出するルートができれば、いいものを安く提供できる」と見込む。国民の平均年齢が29歳と若く、消費意欲が旺盛なのも魅力的だ。

 これまで県産食品の主要な輸出先だった中国や香港は、東京電力福島第1原発事故や処理水海洋放出を受けた禁輸措置が続いており、輸出先の切り替えが必要になった側面もある。

 メキシコ側と直接取引のパイプを持つ商社の国分東北(仙台市宮城野区)が今回の輸出事業を受託。これまでカニかまぼこ、なると、業務用調味料などを扱ってきたという。担当者は「現地のバイヤーから『新しい日本のものを紹介したい』という声が上がっている」と期待する。

 県とメキシコには歴史的な縁も。1613(慶長18)年、仙台藩はスペイン領メキシコとの直接貿易を求め、慶長遣欧使節をスペイン国王とローマ教皇の下に派遣。だが幕府のキリスト教弾圧が妨げとなって、交渉は不調に終わった。

 それから410年余り、藩祖伊達政宗が描いた夢を今度こそ-。遣欧使節に触れつつ輸出戦略を描く県の内部資料からは、そんな思いも読み取れる。県推進室の鈴木清英室長は「競争の激しいアジアから思い切って視点を変え、フロンティアを開拓したい」と話す。(編集部・関川洋平)

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