宮城農高(宮城県名取市)の生徒たちによる東日本大震災からの農業復興プロジェクトが、愛知県のNPO法人が運営する表彰制度で大賞を受賞した。「鉄コーティング直播農法」の普及・浸透を図る試みで、農機具製造大手クボタ(大阪市)の技術指導を受け、「被災農家を応援しよう」と取り組んだ。
表彰制度は「Make a CHANGE Day」。全国192の活動事例から大賞に選ばれた。
プロジェクトは昨年春に始まった。農業科2、3年生を中心にクボタのスタッフから鉄粉でコーティングした種もみを、直接水田にまく技術を学び、実習田で栽培。被災した地元農家にも参加を呼び掛け、6軒の農家が水田計1.8ヘクタールで種まきを行った。
この農法で育苗の手間が省けるほか、コーティングした鉄粉が鳥の食害などを防ぐ効果もある。田植えを行う通常の栽培と作期がずれるため、経営規模拡大もしやすいという。
実習田で収穫したコメの食味は上々で、昨年11月の全国農業高校お米甲子園(米・食味鑑定士協会主催)で特別優秀賞を受賞した。プロジェクトは本年度も継続しており、参加する地元農家は11軒に増加。栽培面積は昨年の3倍に増える見込みだ。
宮城農高は津波で校舎が被災し、農機具も流された。生徒たちは現在、名取市の内陸部にある県農業大学校敷地内の仮設校舎で学ぶ。地元農家の被災の傷痕も深いだけに、農業科3年の宮本光運君(17)は「新しい技術を普及させ、農業復興に少しでも役立てればうれしい」と話す。