宮崎市:ヒット曲「HAPPY」PR動画が著作権侵害に

 米人気歌手ファレル・ウィリアムスさんのヒット曲「HAPPY」に合わせ、市民が踊りながら観光地や市街地をアピールする宮崎市のPR動画が著作権を管理する音楽会社の許可を得ておらず、著作権侵害のケースにあたることが毎日新聞の取材で分かった。話題の楽曲を使った自治体PRが流行しているが、専門家は「自治体は著作権に対する意識をしっかり持つ必要がある」と警鐘を鳴らしている。【菅野蘭】
 「HAPPY」は動画投稿サイトでの公式映像再生回数が4億回超に上る人気曲で、一般の個人やグループなどが曲に合わせて踊る動画も数多く公開されている。
 宮崎市は7月、市内の映像製作会社と関係者から「HAPPYを使って地元を紹介する動画を製作したい」との申し出を受けて賛同し、製作費用の一部を負担した。観光地の青島や市街地などで市民が曲に合わせて踊るPR動画には戸敷(とじき)正市長も参加。8月に完成し、市は同月26日から市のホームページで「市制90周年記念動画」として告知。動画は投稿サイト「ユーチューブ」で公開され、9月2日までに3700回以上再生されている。
 しかし、HAPPYの著作権を共同で管理する「ユニバーサル・ミュージック・パブリッシング」と「ソニー・ミュージックパブリッシング」によると、個人やそれに準ずるグループは無償使用を認めているが、企業や営利団体、行政がPR目的で使用する場合は原則使用料が発生するという。宮崎市の場合、動画は映像製作会社名義で公開され、両社に連絡しないまま無断使用しており、両社は「著作権使用料を払ってもらうケースに当たる」としている。
 ヒット曲に合わせた自治体のPR動画は、アイドルグループ「AKB48」の「恋するフォーチュンクッキー」を使用し、県知事が県民や県職員らとともに踊った神奈川県製作の動画(2013年)が話題になってから各地で流行した。ただ、AKB48の運営会社、AKS(東京)は「『踊ってみた』などの範囲なら、逆にヒットにつながる側面もあり、使用を黙認している」と話し、基本的に著作権使用料を請求していない。
 一方、外国曲の場合は著作権管理会社の許可が必要になる。「ユニバーサル」社によると、企業・自治体なら使用申請を受けた上で、十数万円から使用料決定の交渉を始め、CM使用など場合によっては10億円以上の使用料が必要になるケースもあるという。神奈川県は今年、「HAPPY」による動画製作も企画し、「ユニバーサル」社側に利用申請したが、使用料で折り合いが付かず断念した。
 著作権に詳しい福井健策弁護士は「現状はプロモーションのために著作権侵害を黙認しているに過ぎない。自治体は著作権についてより敏感に対応すべきだろう」と指摘する。
 宮崎市は「製作会社から、著作権は問題ないと聞いていた」(広報広聴室)と釈明し、戸敷市長は「今後、動画を製作する場合はしっかりとしたい」と話した。製作した動画を公開し続けるかどうかは、今後検討を重ねて判断するという。

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