家に帰りたくないサラリーマンの心の声を聞く――。’18年、働き方改革で残業時間が減り、家に居場所がなく会社をよりどころにしていたサラリーマンの「フラリーマン」化も加速。そして’20年、コロナ禍の影響で「在宅」が求められるようになった今、フラリーマンたちはどうしているのか。「家に帰りたくない」500人への調査でわかった漂流会社員の新たな実態に迫る!
◆フラリーマンの時間をいずれはお金に換えたい
●Y本さん……9年前の結婚直後からフラつき癖があった。第1子が生まれて一時期収まるも、娘が成長し義母との同居が始まったことで再びフラつき始めた
Y本さん(41歳・介護職)は、コロナ禍でのフラつく先として重宝している地元のコンビニの駐車場で缶コーヒーを片手に、自身の置かれている環境について話をしてくれた。
「私は9年前に結婚をしたのですが、自分の部屋がなくなってしまったことで家にいるのが苦痛になり、すぐにフラつくようになりました。4年前に妻が出産して、一旦は家にいるようになったのですが、コロナのタイミングで同居中の義母が認知症を発症して揉め事が一気に増えたんです。今は家にいることにデメリットしか感じないですね」
しかし、コロナ禍ではろくにフラつく先もない。そんな中でY本さんが熱中している趣味が、コンビニ巡り。通勤に使っている電動自転車で、さまざまな店舗に足を運んではアプリのポイント稼ぎをしているそうだ。とはいえ趣味に興じながらも、妻に対して多少の罪悪感があるのも事実だという。
「夫婦仲は悪いわけじゃないし、わりと好きにさせてもらえてるほうです。妻は義母の介護もして子供の面倒も見て、家事にアルバイトまでやっているので申し訳ない気持ちも少しあるんですよ」
また、趣味のポイント稼ぎも最大値が目の前で、終わりは近い。
「せっかく時間があるので、もうちょっと生産性のあることをしようかなと考えてます。もちろん、本業の負担にならない範囲ですけどね。フラリーマンでいる時間を少しでもお金に換えられれば、結果的には家族のためにもなると思うので」
◆コロナ禍でフラリーマンも変化
働き方評論家の常見陽平氏はこうしたフラリーマンの変化を、コロナ禍でプラスの方向に働いた良い例だと主張する。
「これまでのフラリーマンは、ただフラフラすること自体が目的でした。しかし、フラつこうにも安易に外出のできない世の中になったからこそ、自分がどういう場所にどう出向くかも考える時代がやってきたのです」
自主性までもが求められるようになってしまったウィズコロナ時代のフラリーマン。それができない人にとっては、時間だけが余ってしまう、生きづらい時代となってしまったに違いない。
◆漂流する会社員アンケート調査
※2020年9月1~2日、35~55歳の既婚者会社員男性3048人を対象に調査
Q1.家に帰りたくないと思いますか?
YES 16.4%
NO 83.6%
以下、YESと答えた方500人に聞きました
Q2.帰宅時間を遅らせる頻度は?
・毎日 21%
・平日は毎日 23%
・休日だけ 10%
・週に2~3回 26%
・週に1回 19%
・その他 1%
Q3.家庭内で自分だけの時間はありますか?
・ある 24%
・少しある 42%
・あまりない 27%
・全くない 7%
【働き方評論家・常見陽平氏】
千葉商科大学国際教養学部准教授。雇用・労働、キャリアなどをテーマに調査研究を行っており、現在は執筆や講演を中心に活動中
<取材・文/週刊SPA!編集部>
―[漂流する会社員の肖像]―