家にPCや高速インターネットがないために宿題ができない子どもの「宿題格差」が大きくなっている

学校教育の中にPCやインターネットが組み込まれることにより、宿題を家で完成できない子どもの存在が数多く報告されています。このような子どもは低所得の家庭にいることから、貧富の差が「宿題格差」として拡大しつつあるという問題が指摘されています。

Why Millions of Teens Can’t Finish Their Homework – The Atlantic

Why Millions of Teens Can't Finish Their Homework
The push toward technology-focused education overlooks the students who lack the resources needed to complete their assi...

PCなどを用いる学校の宿題は増加傾向にあり、2015年の時点で70%の教師がインターネットを必要とする宿題を出すことが示されていたほか、2017年の調査では高校生の90%が月に数回はインターネットを使った宿題を出されることを報告しています。この調査で日常的にインターネットベースの宿題を行っていると答えた子どもは48%だったとのこと。

しかし、学生の子どもを持つアメリカの家庭のうち15%は、家で高速のインターネットが使えません。このような家庭は低所得の家族に多く、裕福な子どもと貧しい子どもの格差を広げていることが指摘されています。一方で、デジタルデバイスが子どもに与える影響を懸念して、シリコンバレーの裕福な親の間では「人間の相互作用や木のオモチャによる教育に戻ろう」という動きがあり、貧しい子どもや中流階級の子どもだけがスクリーンによって育てられるという未来も考えられています。

by Jelleke Vanooteghem

また13~17歳の学生743人を対象としたPew Research Centerの調査結果では17%の子どもが「デジタルデバイス、あるいは高速インターネットを使えない」という理由から宿題を終えられないこともわかっています。このような「宿題格差」は特に黒人の子どもにおいて顕著で、4人に1人がテクノロジー環境の問題によって宿題を終えられず、低収入の子どもの半数が「ときどき」あるいは「頻繁に」携帯電話を使って宿題を行っているとのこと。子どもに家庭での高速なインターネット環境を与える構想に取り組むJohn Branam氏は「宿題を行うための『当たり前に安全で生産的な環境』は、彼らの潜在的可能性を発揮するための能力に、生涯続く大きなインパクトを与えることができる」と述べています。

大手の通信事業者は低収入の家庭向けに補助金を提供していますが、これは十分に利用されていないとのこと。家に宿題を行うための十分な環境がない子どもたちは公立図書館やフリーWi-Fiを提供している場所に行って宿題を行いますが、公立図書館までバスで片道40分かかったり、コンピューターに30分の使用制限があったり、フリーWi-Fiを利用するためには商品を購入する必要があったりと、多くの障害が存在します。

by Val Vesa

そして、テキサス大学オースティン校のCraig Watkins氏は「The Digital Edge」という著書の中で、家に十分なデジタル環境がない子どもは、「週末に教師にデジタル環境を与えてもらうようにする」といった目的を持つため人間関係を築くのに熟達し、同じような環境にいる友人と協力しデバイスをシェアするといった「シェアリングエコノミー」を形成することを記しています。

Watkins氏は、学校の代表や政策決定者は豊かな環境にいることから、デジタル格差がどれほどのものかを理解していないという「盲点」を指摘しました。「テクノロジーへのアクセスがあれば、よりよい学習の未来を築けるという仮説がありますが、全てにおいてこれが当てはまるわけではありません」とWatkins氏は語っています。

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