宿泊以外の観光も賠償 東電、東北5県対象 新たな案を提示

福島第1原発事故による観光業の風評被害をめぐり、東京電力は22日までに、福島県を除く東北5県を対象とする新たな賠償案を示した。原発事故が5県の観光に一定の影響を与えたことを認め、昨年3月11日以降の減収分に対して賠償する方針を初めて提示した。旅行業など宿泊関係以外の観光業者も初めて賠償の対象に加えた。
 山形県旅館ホテル生活衛生同業組合が22日、山形市内で記者会見して明らかにした。東電は21日に仙台市内で開かれた5県の旅館組合との会合で賠償案を示したという。
 会合で東電は、東北以外の観光客から東北5県への旅行が敬遠されたことに関して「原発事故と一定程度の相当因果関係があったと考えられる」として、風評被害を一部で認めた。
 案では昨年3月11日以降の減収分に対して、その一部を賠償する。賠償額の算出方法は、政府の中間指針で観光業の風評被害が認められた福島など4県と基本的に同じだが、対象期間が限定されていない4県と異なり、期間は昨年11月までの約9カ月間に限られる。算出方法も4県と違い、賠償額を低く抑える計算式が用いられる。
 東北5県を対象とする賠償案の提示は6月に次いで2回目。前回の賠償案は、「18歳以下の人を含む」など特定の旅行が昨年4月22日までに解約された場合に限られた。
 これに業者側は「予約段階で詳しい年齢を確認するのは難しい」などと反発。予約を取らない宿泊関係以外の観光業者が対象にならない点も問題視されていた。
 今回の賠償案では予約や解約の有無にかかわらず、原発事故後に売り上げがある割合以上に減った場合は賠償を受けられる。請求に必要な書類が少なくなり、業者の負担も軽くなると見られる。
 山形県旅館組合の佐藤信幸理事長は「相当な前進だ」と評価する一方、今年の冬に山形県内で顕著だったスキー修学旅行の解約についても賠償対象に加わるよう、東電に対象期間の延長などを求める考え。佐藤組合長は「これ以上の時間はかけられない。秋までにはまとめたい」と述べた。

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