日本政策投資銀行東北支店と東北観光推進機構は、宿泊施設を対象に初めて実施した東北のインバウンド(訪日外国人旅行者)受け入れ環境調査の結果をまとめた。宿泊施設が考える強みと外国人のニーズにずれがあるほか、旅館を中心に外国語対応が進まず集客に結び付いていない現状が浮かび上がった。
宿泊施設側が挙げる自らのPRポイントは「通信環境の整備」(56.8%)がトップ。「日本料理、地元の酒の充実」43.2%、「観光施設へのアクセス」37.4%、「広い温浴施設」30.0%と続いた。
同行東北支店が昨年実施したインバウンド意向調査によると、外国人が宿泊施設に求めるものとして、最多の「通信環境の整備」以外では着物着用や餅つきなど日本文化の体験、宿泊施設外での夕食選択などが挙がり、認識の差が表れた。
同行の担当者は「さらなる集客には外国人のニーズをくみ取った対応が必要だ」と指摘する。
宿泊施設の外国語対応は、全体の4割がホームページや館内表示の英語併記に取り組む一方、中国語や韓国語は1~2割だった。宿泊施設の形態別ではリゾートホテルなどで多言語化が先行、旅館は低調だった。
宿泊状況は、外国人客の割合が「5%未満」が83.5%、「5%以上」は14.7%だった。業態別ではリゾートホテルが25.0%だったのに対し、旅館は11.6%にとどまり、外国語対応の充実と集客力との相関が見られた。
外国人受け入れの課題は「(語学や異文化理解など)従業員教育」が33.1%で最多。以下、「災害時の避難誘導」27.3%、「対応可能スタッフの常駐」25.9%の順だった。
今後の受け入れは「自然体で」が56.3%で現状維持を望む声が半数を占め、「積極的に」は35.4%だった。自由記述では「インバウンドを迎えないと成り立たず、積極的に取り組む」との声がある一方、「日本人常連客と比べコストがかかりすぎる」との意見もあった。
調査は昨年9月、東北6県と新潟県の主な810の宿泊施設を対象に実施。517施設(63.8%)が回答した。観光機構の紺野純一専務理事は「調査結果を東北一体での受け入れ態勢強化や周遊ルート設定に生かしたい」と話した。