富士重工業は11日、滑らかな加速性能を持ち、燃費を向上させる無段変速機(CVT)を平成24年にも全車種に搭載する方針を明らかにした。CVTの全車種搭載は国内大手メーカーで初めて。販売の主力であるガソリンエンジン車の低燃費化を進めるためにCVTを活用する狙いがある。
同社は四輪駆動の中型車にも搭載できるチェーン式のCVTを独自開発し、21年に主力車「レガシィ」とミニバン「エクシーガ」に採用している。今後は「インプレッサ」「フォレスター」の順に搭載車種を増やし、ターボ車などを除く全車種に搭載する方針だ。同社幹部は「スバル車の売り物である走行性能と、燃費低減を並立させる一発回答がCVTだった」と話す。
燃費の向上を急ぐのは環境規制への対応が迫られているという事情がある。日本で27年を目標に厳格な新燃費基準が導入されるほか、欧米でも排ガス規制が強化されるためだ。
このため同社は27年までに、全車両で20年比30%の燃費向上と排出ガスの25%削減を達成する目標を掲げ、電気自動車を21年に発売したほか、ハイブリッド車についてもトヨタ自動車と共同開発を進める方針。その上で売り上げの大部分を占めるガソリンエンジン車の燃費改善策としてCVTを“切り札”にする考えだ。
変速機をめぐっては、欧州各社がデュアルクラッチ式トランスミッション(DCT)と呼ばれ、走行性能を向上させるといわれるクラッチを使った自動変速機などを採用。他の国内メーカーは、主に従来のオートマチックトランスミッション(AT)やCVTを車種やモデルごとに使い分けている。現時点ではCVTはATよりも価格が高く、重たいデメリットもあるが、同社は「採用が進むことでコストや重量も下がる」(富士重)と期待している。
■無段変速機(CVT) ギアを使って段階的に自動変速する従来のオートマチックトランスミッション(AT)と異なり、ギアを使わず金属バンドなどを用いて変速する。無駄なエンジン回転を抑えることで燃費を向上させ、スムーズな加速も得られる。日産自動車は平成20年の生産車両のうち25%でCVTを採用。トヨタ自動車やホンダも小型車などを中心に搭載している。