富谷町、年内にも人口5万到達 組織強化が急務

宮城県富谷町の人口が昨年12月に4万9000を超え、「富谷市」に移行するための要件「人口5万」に年内にも到達する見通しとなった。地方分権改革の進展に伴い、市の権限は町村と比べ、格段に範囲が広くなった。市制移行が現実味を帯びてきた町にとって、職員の能力向上や組織強化が行政課題になりそうだ。
 富谷スポーツセンターで7日開かれた新年祝賀会で、4万9000人目の町民となった阿部勝さん(72)、伊代子さん(66)夫妻に記念品が贈られた。
 阿部さん夫妻は石巻市の自宅が東日本大震災の津波で流された。昨年12月20日に富谷町成田に移った。「二度と津波がない所に住みたかった。仙台市にも近く、きれいな町」と笑顔を見せた。
 富谷町の住民は昨年12月末現在、4万9033人。仙台市北隣の新興住宅地に人口流入が続き、明石台東地区では約750戸分の宅地が開発中。年内にも5万人突破の可能性がある。
 市制施行は、早ければ2015年国勢調査の翌年の16年が想定される。人口規模では岩沼市(約4万3000人)、東松島市(約4万人)、白石市(約3万6000人)、角田市(約3万1000人)を上回る。
 市になれば、行政サービスに大きな変化が生まれる見込みだ。
 昨年8月成立の地域主権一括関連法は、市と町村の権限に一線を引いた。騒音や悪臭の規制地域指定、家庭用品販売業者への立ち入り検査など都道府県の権限は市に移譲したが、町村は除かれた。
 かつて、政令市を除く市と町村の権限に大きな差はなかった。地方自治法上、市には生活保護事務などを担う福祉事務所の設置が義務付けられた程度だった。
 内閣府地域主権戦略室は「平成の大合併が進み、大規模な市が増えた。町村より職員数や能力を十分に備えているとの前提で、市への権限移譲が多い」と説明する。
 税金の配分も町村に比べ、市に手厚い。
 県が市町村に配分する緊急雇用創出事業の交付金(11年度)は、市に一律4000万円で、町村には一律2000万円。求職者数に比例した配分額も加わるが、県は「町村は規模が小さく、さまざまな事業展開が大変。市に多くの雇用創出を期待している」という考えだ。
 実際の行政能力や人口と関係なく、「市」であるだけで権限やカネが来るシステムだ。
 富谷町は10年度、市制移行に備えて14課体制から4部14課に組織を改編したが、行政実務の向上や職員のレベルアップは緒に就いたばかりだ。
 若生英俊町長は新年の訓示で「気魄(きはく)、熟考」を求めた。「5万人都市を新たに造る気概を1人1人が持ってほしい」と話している。

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