弘前大と東北大、仙台市の機械メーカーなどが、寒冷地や積雪地に対応する電気自動車(EV)のシステム開発に共同で乗り出す。操縦や駆動系の新技術を組み合わせて、寒冷地の厳しい気候条件でもエネルギー消費の抑制を図り、EVの課題である航続距離の延長につなげる。研究グループは2、3年後をめどに実証モデルの試作にこぎ着けたい考え。
<断熱機能向上>
プロジェクトには両大学のほか山形大、金沢工大(石川県野々市町)と本田精機(仙台市)、工藤電機(同)などが参加。弘前大大学院理工学研究科の古屋泰文教授(機械材料機能学)が開発の中心を担う。
開発を進めるのは「ステア・バイワイヤ」(SBW)と呼ばれる操縦機構と、四つの車輪にモーターを組み込む「インホイールモーター」(IWM)を連携させる新システム。
SBWはハンドル操作をセンサーで感知し、タイヤの回転、角度を制御する。ハンドルとタイヤをつなぐハンドル軸が不要で、軽量化や車体下部の気密性が向上し、断熱機能が高まる。IWMは四輪駆動となる上、モーターの力を効率よく車輪に伝えられるとされる。
いずれもEVを動かす車載電池の消費量を抑えることができる技術で、グループは二つを組み合わせて高性能なシステムの確立を目指す。
<北国の力結集>
基幹部品のセンサーやモーターの性能を左右する磁性材料の製造には、古屋教授が開発した「急冷遠心鋳造法」を使う。急速冷却と遠心力を組み合わせた成形・加工技術で、部品の小型化などが可能でコスト低減にもつながるという。
このほかヒーター熱源用やバッテリー劣化時の補助電源用として、小型バイオガスエンジンをEVに搭載することも検討する。
電池とモーターで走るEVは「究極のエコカー」として市販が始まっているが、ヒーター使用による電力消費の多さが課題とされる。気温0度でヒーターを使って走行した場合、航続距離が公表値の30~40%にとどまるとのデータもある。
古屋教授は「EVの寒冷地対応は大きな課題。産学連携で北国の知恵と技術を結集し、寒冷地に特化したEVの在り方を発信して産業創出につなげたい」と話す。