菅直人副総理・財務相が25日の閣議に報告した平成21(2009)年末の対外資産・負債残高によると、国内の民間企業や個人、政府が海外に保有する資産から、海外から国内への投資(負債)を差し引いた対外純資産残高は前年末比18・1%増の266兆2230億円で、現行の統計方式を採用した8(1996)年以降で最高だった19(2007)年末の記録を更新。世界一の債権国の地位を19年連続で維持した。
対外純資産の増加は2年ぶり。国際通貨基金(IMF)などの統計によると主要国・地域別では、21(2009)年末現在の2位は中国(167兆7333億円)で、ドイツ、香港、スイスと続く。
21年末の日本の対外資産残高は前年末比6・9%増の554兆8260億円で、2年ぶりに増加。21年末の為替相場で円が20(2008)年末に比べて対ドルで2・0%安くなるなど、円安が進んだ影響で外貨建て資産の評価額が上がったことに加え、外国株や外債への投資を示す証券投資が増えた。証券投資は約261兆円で、外国株への投資額は約1・5倍だった。企業の海外進出に伴う直接投資は10%程度増の約68兆円となった。
一方、海外投資家の対日投資などを示す対外負債残高は1・7%減の288兆6030億円で、2年連続の減少。リーマン・ショック後の金融市場の混乱で、日本国債や日本企業の社債を手放す外国投資家が増えたことなどが影響した。
菅財務相は25日の閣議後記者会見で、「海外から日本への投資がやや減っている。一概に喜んでばかりはいられない」と指摘。そのうえで、日本経済が成長路線にしっかりと復帰することが対内投資の増加につながるとの考えを示した。
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【用語解説】対外純資産
国全体が海外に保有する資産から負債を差し引いた残高。資産には、国内の金融機関や個人投資家による海外株式や債券への投資のほか、企業の海外進出に伴う直接投資、政府の外貨準備などが含まれる。負債は海外からの日本への投資や融資などを示す。プラスなら債権国、マイナスなら債務国となる。