対馬の森林競売 韓国業者も関心 絶滅危惧種ツシマヤマネコ生息地

絶滅危惧種である「ツシマヤマネコ」が唯一生息する長崎県対馬市の約260万平方メートルの森林地が売りに出され、保護のため市が買収に向けて動き出したが金額などで折り合わず、競売入札に付されたことが28日、分かった。対馬で広大な森林地が売りに出されるのは初めてで、外国の業者からも問い合わせがあるという。市では「対馬のシンボルが奪われる」との危惧の声が出ている。
【フォト】ツシマヤマネコ(京都市動物園で飼育中のもの)
 売りに出されているのは、対馬市北東部に位置する上県(かみあがた)町の計49筆の土地で、東京ドーム55個分に相当する。市は買収を検討していたが、購入価格や購入後の事業展開などに難点があり、現在、長崎地裁厳原(いづはら)支部が管轄する一括入札にかけられている。
 入札期間は今月26日から9月2日までで、9月4日に開札予定。売却基準価格は約3400万円。不動産関係者によると、「広大な奥深い土地で、個別の土地の境界も不明」という場所にあるという。
 売りに出された理由は過疎化の影響が大きい。対馬市の人口はこの50年間で半分の約3万人に減少。入札の陳述書には、所有者が「林業を営んでいた祖父らが亡くなり、平成18年から何らの利用もしていない」と後継者不足で手放した経緯が記載されている。
 しかし、この土地にはスギやヒノキなど良質な木が群生。市関係者によると、特に巨木は中国大陸ではまれで、対馬の庭園用の大きな槙(まき)が昨年、中国の業者に1本1千万円で取引されたという。
 対馬市では近年、韓国人がホテル、釣り宿などを買収した事例がある。韓国から高速船で約1時間と近く、年間約15万人の韓国人が訪れ、土地の買収も進む。不動産関係者によると、「『韓国にある業者が資料を求めている』と代理人から問い合わせがあった」と、今回の土地にも関心を示しているという。
 こうした手つかずの土地には希少種が多くすみかとしている。ツシマヤマネコはそのシンボル。このヤマネコは推定で約100匹しかおらず、餌となる昆虫やネズミが減ったことで個体数が減っている。
 対馬野生生物保護センターの西野雄一自然保護官は「売買についてコメントする立場にないが、ツシマヤマネコの行動範囲は1600万平方メートルとかなり広く、生息環境としての森林は重要だ」と、今後の土地の行方に懸念を示している。

タイトルとURLをコピーしました