新型コロナウイルスの感染拡大で、首都圏では週末の外出自粛要請を受け、食料品を求める客が小売店などに殺到した。
政府の緊急事態宣言が出された場合も同様の事態が起きる恐れがあるが、専門家は、買い物は「不要不急」に当たらず自粛対象ではないと指摘。「マスクと違い食料は十分にある」と、冷静な行動を呼び掛けている。
農林水産省によると、米は半年分、小麦は2カ月分以上の国内備蓄がある。生産や流通、輸入も止まっておらず、店頭の欠品は一時的という。担当者は「食べる量が増えるわけではない」と必要量の購買を求めた。
東京大大学院の関谷直也准教授(社会心理学)は、外出自粛を求めた25日の都知事会見以降、一部で見られた買いだめの動きについて、「混雑する店内や行列はリスクを高め、本末転倒だ」と断じる。「会見で危機感は伝わったが、ロックダウン(都市封鎖)という言葉が一人歩きし、何のための自粛なのか伝わらなかった」と話し、「ライフラインとなる食料品店は閉まらない。焦らないでほしい」と強調した。
買いだめに走る心理については、食料不安の方が感染よりイメージしやすく行動に移しやすいと説明。マスクとは根本的に供給事情が異なるにもかかわらず、マスクの品薄が解消されていないことも買いだめを助長したと分析した。
愛知工業大の小林富雄教授(流通経済)は、買いだめが続くと供給過多を招き、結果的に食品ロスにつながる恐れがあると危惧する。「絶対量は確保されており、必要な分だけ計画的に買ってほしい」とし、「家庭内に眠っている食品もある。これを機に整理してみてはどうか」と提案した。
また、「スーパーも医療機関と同じ社会インフラで、店員の健康も確保しないといけない。強制的な数量制限など、店側だけでなく行政にも介入してもらいたい」と注文した。