専門家が語る「損しない家」3条件

今回のコラムは、タワーマンションとそれ以外の物件で値上がり幅がどの程度違うのか、独自に調査した結果について書く。エリアを都区部に限定し、2001年以降に販売された新築全件について、2022年以降に成約した住戸の新築時の価格との比較で、値上がり率を算出する。

「いつ買ったか?」で値上がり率はかなり違う。直近の相場上昇は2013年の金融緩和に始まり、以降一貫して相場は上昇してきている。そのため、2013年の新築の値上がり幅が最も大きく、平均50%になる。この値上がり率は直近ほど経過期間が短いので、小さくなる傾向がある。

この傾向を排除するために、販売年の平均値上がり率を引いて、その物件の超過値上がり率を算出する。つまり、その年の中では比較的値上がりした割合を「超過値上がり率」として、これを物件属性で平均して算出している。

タワマンとそれ以外の物件の差はかなり大きい

この期間のタワーマンションの超過値上がり率は30.1%であるのに対して、それ以外の物件は-2.2%と、かなりの差がある。

特に2001~2010年のタワーの超過値上がり率は33.4%で、その他が-3.0%で36%超の差、2011~2022年のタワーの超過値上がり率が21.0%でその他が-1.5%で22%超の差があることから、今後築年を経るに従って、タワーマンションとそれ以外の物件の差が広がる可能性がある。

中でも2008年販売のタワーの超過値上がり率は57.9%と非常に高い。リーマンショックに端を発する需要減退で売れ行きは非常に悪かったが、東京都の土地の定期借地権であるシティタワー品川、麻布十番の2つのランドマークタワーであるシティタワー麻布十番、パークコート麻布十番ザ・タワー、世田谷区の二子玉川ライズ タワー&レジデンスタワーセントラルなどの地域を代表する物件が多かった。

これを見ても、重要なのは「当時の売れ行き」ではなく、「立地(主要駅・駅近)」と「物件属性(大規模・タワー)」であることがわかる。

こうしたタワーが供給されたエリアを特定すると、1位が江東区、2位が港区、3位が中央区になり、その成約数の割合はこの3区合計で6割とかなり集中している。駅で言うと、江東区は豊洲・清澄白河、中央区は月島・勝どき、港区は湾岸エリアから内陸まで分散している。典型的なタワーマンションが林立するエリアである。

超過値上がり率のトップは千代田区

では、超過値上がり率を見ていこう。タワーは偏在するものの、値上がり幅は希少性を加味して決まってくる。超過値上がり率のトップは千代田区で53.4%、2位が港区の48.3%、3位が渋谷区の46.9%と続く。

千代田区は番町・麹町の邸宅街ではなく、飯田橋駅・秋葉原駅・御茶ノ水駅・神保町駅の希少性のあるタワーが牽引している。渋谷区は西新宿駅・恵比寿駅・渋谷駅・代官山駅の近くに多い。

4位の中央区36.2%に肉薄するのは、5位台東区で35.2%。秋葉原駅・上野駅・浅草駅・浅草橋駅のピン立地なら、都心3区と並ぶ値上がりとなっている。

6位は文京区の33.1%で春日駅や茗荷谷駅、7位は新宿区31.9%で西新宿、神楽坂、四谷アドレスに多い。

8位は墨田区29.8%で錦糸町駅・曳舟駅に集まっている。9位世田谷区27.4%は区として高さ規制があり、もうタワーマンションは建てられない。その分、過去の希少物件の資産性は高い。

10位は江東区27.3%、11位は豊島区27.0%で池袋駅・東池袋駅・大塚駅に集中する。以降、中野区25.5%、目黒区22.4%、品川区21.5%、荒川区13.8%と続く。

一方、都区部の他県との境となるエリアはタワーマンションの強みを出しにくくなる。規制のかかった世田谷区を除く8区は足立区の8.4%を最高に、葛飾区の-6.0%までほぼ他の物件との資産性で優位になってはいない。

こうした傾向は、都区部以外でも見られるのか調べてみた。神奈川県はタワーマンションとそれ以外では超過値上がり率の差が最も大きく43.0%、埼玉県で27.0%、千葉県で22.7%、都下で15.9%だった。

神奈川県の中では、横浜駅とみなとみらい地区のタワーとの超過値上がり率は群を抜いている。ナビューレ横浜タワーレジデンスは202%、ブリリアグランデみなとみらいパークフロントタワーは115%となっている。また、川崎駅前のラゾーナ川崎レジデンスセントラルタワーも116%である。

近畿圏でもおおむね同じ傾向

これは、近畿圏でもおおむね同じ傾向になる。大阪府で28.8%、兵庫県で32.3%だ。代表物件が、グランフロント大阪オーナーズタワーで120%と頭一つ抜けている。

ただし京都府は-21.6%とマイナスになる。タワーが2棟しかなく、その立地が郊外で人気がないのと、高さ規制がある中京区などの中心地のほうが資産性は高いことが要因と考えられる。京都で最も超過値上がり率が高い物件は、ルネ烏丸御池で151%となっている。

こうして、都区部以外のタワーの超過値上がり率は22.2%に対して、それ以外は-8.9%で、その差は31.0%となる。これは都区部の32.3%とほぼ同じなので、タワーは都市圏内では資産性で圧倒的に優位にあることになる。

タワーの定義は20階以上である。全国のマンションの超過値上がり率は9階までの低層が-8.2%、最も棟数が多い19階までは4.0%と平均並み、タワーで29階までが22.7%、39階までが33.8%、40階以上が53.0%となる。つまり、タワーには他の物件と高さを比較されないようなランドマーク性がその資産価値の源泉だとわかる。

この高さというランドマーク性、駅近などの立地、そして希少性の3つがそろうとその資産性は圧倒的になる。20階に満たず、外観で目立たない程の高さでもタワーを名乗る物件とは大違いなので、注意しよう。

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