小中学校広がるスマホ制限 「長時間使用は異常」「帰宅時安全確保は」首長賛否

 小・中学生のスマートフォン(高機能携帯電話)や携帯電話の使用を制限する試みが全国的に始まっている。愛知県刈谷市が4月から午後9時以降の使用を禁止するよう各家庭に要請したのを皮切りに、横浜市や仙台市でも使用制限を呼びかけている。無料通信アプリLINE(ライン)などを使ったトラブルや生活習慣の乱れを避けるのがねらいで、他の自治体も関心を寄せている。
 刈谷市では市内全21校の小、中学校が保護者と連携して、(1)必要のないスマホや携帯電話を持たせない(2)有害サイトを閲覧制限する「フィルタリング」サービスを受ける(3)午後9時以降は親が預かる-などを学校とPTAの連名で各家庭に要請。新年度から始めた。
 文部科学省の担当者は「地域で一律に使用時間の制限まで設ける試みは珍しい」としているが、同様の“呼びかけ”が各地に波及している。
 横浜市は全市立学校の保護者向けに、(1)家族のいるところで使う(2)食事時は使わない(3)夜9時以降のメールはやめる-ことを明記したリーフレット32万部を配布。仙台市も「スマホや携帯電話でメール、インターネット、ゲームなどをする時間が長いほど成績は悪くなっている」とする東北大学の研究者などの調査をもとに「1日1時間以内」と呼びかけている。
 埼玉県では5月以降、一部の県立高校をモデル校として、生徒を中心にスマホ使用のルール作りを行うことを決めた。
 一方で「あるものを『使わせない』という指導は難しいのではないか。トラブルを回避できるかは子供たちの自律にかかっている」(水戸市教委教育総合研究所の担当者)と、実効性に懐疑的な見方もある。
 首長の反応もさまざまだ。群馬県の大沢正明知事は「使用時間が1日5、6時間という子供もおり異常だ。学校だけの問題ではない。家庭と連携したい」とし、茨城県の橋本昌知事も「(刈谷市の)成果が表れれば市町村教委と一緒に弊害防止に努める」と前向きにとらえる。
 だが、埼玉県の上田清司知事は「禁止は現実的ではない。良い物を学ぶ手段とすることが大事」と規制には否定的。新潟県の泉田裕彦知事も「夜間における塾帰りの安全確保から、行政側が一律に制限を課すのはどうか」と指摘する。
 関心の高いテーマだけに、今後も各地で議論が活発化しそうだ。

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