政府は来年度、国産の小型人工衛星による観測網の早期構築に向け、企業を支援する取り組みを始める。小型衛星の撮影データなどをあらかじめ5年分程度買い取る契約を結ぶことで、事業化までの資金調達を継続的にサポートし、世界に対抗できる企業を育成する。 【動画】UFO!? 米国防総省が映像を公開
100~500キロ・グラム程度の小型衛星を群れのように連携させて運用する観測網は、「衛星コンステレーション」と呼ばれる。30基以上打ち上げれば、数時間以内に世界のどの場所でも撮影したり、観測したりできるのが最大のメリットだ。
政府が、成長を見込めるとして特に重視するのが、小型レーダー衛星。通常のカメラを搭載した光学衛星では難しい悪天候、夜間での撮影も可能で、データを地震や水害の被災状況の把握、不審船の監視などに常時使える利点がある。
国内では、新興企業を中心に開発が進むものの、現状では1~2基による運用や実験機の打ち上げにとどまる。売り上げ実績がほとんどない中で衛星を量産する必要があるうえ、衛星群を連動させる新しい技術開発などもあり、事業を軌道に乗せるのが難しいためだ。
政府は、これらの開発を後押しするため、20基以上の小型衛星の打ち上げを計画する企業を対象に、データを購入する契約を締結。衛星(1基あたり数億~十数億円)の開発費を5年間程度にわたって支援する方向だ。買い取ったデータは、政府の複数の省庁や自治体の間で共有して使えるようにする。
小型レーダー衛星の開発をめぐっては、約10基の衛星群を組むフィンランドの企業が日本への進出を計画するほか、米国では米空軍にデータを提供する企業が登場するなど、競争が激しい。政府は、海外勢が主導権を握る前に、国内企業の事業化を促し、日本独自の観測網の実現を目指す。
◆衛星コンステレーション=小型衛星を星座(コンステレーション)のように展開して運用する。米宇宙企業スペースXが、1万基以上の衛星による高速通信の実現を目指すほか、農林水産業や交通・物流などでの活用が期待されている。