新型コロナウイルス感染の急拡大で、小売りや外食チェーンの臨時休業が相次いでいる。大阪・梅田の百貨店では全館を一時休業した。各社とも感染対策をしてきたが、感染力の強いデルタ株の広がりで、「自衛には限界がある」という声もある。
大阪駅に近い百貨店「阪神梅田本店」(大阪市北区)。クラスター(感染者集団)が発生し、従業員97人の感染が確認された。7月31日と8月1日の土日に全てのフロアの営業を休止した。部分的に再開した2日も、感染者が集中した地下1階と1階の食品売り場は休業とした。食品売り場関係者約1500人を含め計約2千人にPCR検査をしているが、全員の結果が出ていないためだ。
同店では客向けのアルコール消毒器具や検温設備を設置していた。体温が37・5度を上回る人の入店を断り、貴金属売り場などでは人数制限もしていた。従業員はマスク着用や検温、手指の消毒などを徹底してきた。1人での食事を勧め、休憩中でもマスクなしの会話は禁止。出張や会食も避けるよう呼びかけた。
そうした環境でのクラスターの発生に、同店の広報担当者は「デルタ株かもしれないが、正体がわからず恐ろしい」と漏らす。同店ではこれまで営業時間内だけだった換気を24時間にするなど、対策を強化した。
■外食チェーンでも相次ぐ一時閉店
東京の伊勢丹新宿店では、7月26日から8月1日まで取引先なども含めて計54人が感染した。1日1万人強が働く大規模店で、広報担当は「社員の感染状況を精査している。休業するかどうかは保健所の判断を仰ぐ」という。
臨時休業は外食チェーンでも続出している。スターバックスコーヒージャパンでは、従業員の感染で休業するところが2日時点で21店舗に上る。昨春以降、出ても1日1〜2店舗だったが、7月下旬から1日5店舗ほどに増えている。大半が人手不足による休業だ。
同社では感染した従業員が発症日から数日前までの間に勤務していた場合、共に働いた従業員を2週間の自宅待機にする独自のガイドラインがある。保健所が休業の必要がないと判断しても、自社の判断で休業にするケースが多いという。
日本マクドナルドも2日時点で従業員から新型コロナの感染者が出たとして6店舗を一時閉店している。
このように感染や休業を公表している企業は全体の一部だ。ある外食大手の担当者は「保健所が客への感染リスクはないと判断すれば、陽性者が出ても発表しないこともある」と認める。感染は急拡大しているが、企業における実態は見えにくい。
郵便局でも影響は出ている。7月下旬だけで全国100以上の郵便局が、局員らの感染によって窓口業務が一時休止となった。前月の同時期と比べると、一時休止の局数は5倍以上に激増した。
スーパー各社は危機感を強める。首都圏や関西に計約300店を展開するスーパーでは、7月末から連日約10人の感染者が出ているという。休業店舗はないが、広報担当者は「家庭など業務外で感染していることもある」と話す。
首都圏に展開する、あるスーパーは「東京の感染者数の増加に合わせて、従業員の感染者数も増えている」という。感染者が出た店舗では閉店後の夜間に消毒などをして、他店から応援を受け入れている。広報担当者は「スーパーはライフラインなので、営業するのが使命だ」と話す。
小売業界のある関係者は「事業者は感染防止に最大限の取り組みをしている。五輪開催で人が外に出たくなるメッセージが発信されているなか、人流は抑えられていない」と話す。(宮川純一、若井琢水、江口英佑)