小林健氏「製造拠点、日本に戻す」 17日にも日商会頭に選出

三菱商事相談役の小林健氏(73)が1日、東京商工会議所会頭に就任する。17日には日本商工会議所の会頭にも選ばれる予定で、両商議所の会頭を9年務めた三村明夫氏(81)の後任となる。小林氏は毎日新聞などのインタビューで、円安に対応するため、企業の製造拠点を「日本に呼び戻す」と述べ、中小企業の輸出拡大を促すことにも意欲を示した。

「円安で安いニッポン」危機感

 総合商社の元経営者が会頭に就くのは初めて。商社で培った国際感覚と大小さまざまな企業と取引してきた経験を買われた。足元では日米金利差拡大や「失われた30年」と呼ばれる低成長のもとで急激な円安が進んでおり、小林氏は「円安は日本の国際競争力低下を反映しており『安いニッポン』になっている」と危機感を示す。主な要因として過去の円高などに伴って「製造拠点がどんどん海外へ移転したことが非常に大きい」と指摘する。

 国際社会の分断が進み、サプライチェーン(供給網)の断絶などグローバル経済のリスクも表面化している。このため、小林氏は「経済安全保障(の観点)も含めて『日本で生産する』という回帰を起こしたい。これは中小企業も一緒だ」と述べ、競争力回復には生産の国内回帰が重要とみる。

 商議所の会員は中小企業が中心だ。これまで円安の恩恵を受けやすいのは自動車などの大企業が中心だったが、中小企業の輸出拡大にも力を入れたい考えで「円安メリットを最大限活用しなければならない」と語る。日銀が続ける大規模な金融緩和については「レビュー(点検)と出口戦略の検討が必要だ」と指摘する。

 小林氏の両商議所の会頭任期は25年10月末まで。「コバケン」の愛称で親しまれ、バドミントンは「学生時代は名選手だった」と豪語するほどの腕前。「自然体で物事を処す」を信条とする。「自己変革に挑戦していく企業を全力で支援する。困難にも果敢に取り組み、新しい時代を切り開いていきたい」【中津川甫】

こばやし・けん

 1949年生まれ。東京大卒。71年三菱商事入社。社長、会長を経て2022年4月から相談役。16~20年に経団連副会長、22年まで2年間、日本貿易会会長を務めた。東京都出身。

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