小水力発電、再生エネルギーの注目株

 節電の中、発想の転換として注目を集めているのが「小水力発電」。河川や農業用水などのわずかな高低差を利用して電力を生み出し、「自給自足」する。雨量が確保でき、多数の水系がある日本は適地が多いとされ、関西広域連合も導入する方針を決めている。太陽光や風力に比べて発電技術は確立しており、再生可能エネルギーの牽引(けんいん)役として期待できるという。
 ◆渡月橋照らすLED
 8月5日、千葉市美浜区で開かれた「小水力発電」をテーマにしたセミナー。中小の建設業、機械メーカー、研究機関、自治体などから150人以上が参加し、会場は満員。主催した公益財団法人千葉県産業振興センターは「これだけの人が集まるのは珍しい」と関心の高さに驚く。
 全国小水力利用推進協議会によると、現在、全国に出力1千キロワット以下の小水力発電施設は約500カ所。京都・嵐山の観光名所、渡月橋で歩行者の足元を照らす60基のLEDライトは橋の下、桂川に設置した出力5・5キロワット発電機が生み出している。
 平成17年に地元企業などでつくる嵐山保勝会が3400万円を投じて設置。余った電力は売電し、維持管理費に充てている。同会理事の吉田憲司さんは「京都議定書を考慮し、電力供給を受けるより自分たちでつくりだそうという話になり、小水力発電を選択した」と説明する。
 群馬県嬬恋村では、農業用水の約1メートルの落差を利用し、出力30ワットの発電機を設置した。延べ10キロの農業用電気柵に電気を送り、イノシシから農作物を守っている。また、川崎市上下水道局では、浄水場から配水池に流れる水の力で水車を回して発電、売電している。近隣の小学校が環境学習に訪れることも多いという。7月下旬には2府5県から成る関西広域連合が導入方針を決め、新エネルギー勉強会で具体策の検討に入った。
 ◆バックアップにも有効
 小水力発電は、2メートルほどの落差と安定した水量があれば河川、農、工業用水、上下水道施設などに設置可能で、環境省の再生可能エネルギー導入ポテンシャル調査報告書(平成22年度)では、1400万キロワットと推計している。茨城大農学部(農村計画学)の小林久教授は「最も確実な自然エネルギーで、基幹的な再生可能電源にできる。技術が完成しているので、きちんと設計して導入すれば、確実に発電が行え、経済性も担保できる」と指摘する。
 国家戦略室のエネルギー・環境会議が7月にまとめた「革新的エネルギー・環境戦略策定に向けた中間的な整理案」によると、1キロワット時当たりの発電コストは小水力が10~36円、風力11~26円、太陽光37~46円、バイオマス12~41円となっているが、計画から稼働までに要する期間や稼働の安定性など、コスト以外の検討課題も多い。小林教授は「将来拡大する不安定な再生可能電源のバックアップ、調整にも使える」と小水力発電の優位性を強調。河川法などクリアすべきハードルはあるが、大規模工事や特殊工事は不必要のため地元業者の参入が可能で、地域への波及効果も期待できるという。

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