投票終了からわずか4秒で「当確」の文字がテレビに躍った。圧倒的な勝利で終わった7月5日の東京都知事選。再選した小池百合子都知事(67才)はにやりと笑って、こう語った。
「緊張感を持って、新型コロナに対応していきたい」
都内の新型コロナウイルス感染者数は7月2日から連日100人を超えた。
「感染者が増えても小池さんは『夜の街に行かないで』と繰り返すばかりで、感染拡大対策はほぼゼロ。その最大の理由はお金がないから。9000億円以上あった”都の貯金”の財政調整基金の残高はコロナ対策で807億円まで激減した。資金不足で補償できないので、休業要請を出し渋らざるを得ない。そのため、とにかく『夜の街』を連呼して悪者にし、そのほかの東京は安全だと印象づけたいのです」(都政関係者)
確かに新規感染者は、接待を伴う飲食の場など「夜の街」の従業員やその客が目立つが、それには理由がある。
「新宿区長と歌舞伎町のホストクラブ経営者らは協議を重ね、無症状でも従業員に積極的に集団検査を受けさせました。ホスト店側も“感染していない”ことがはっきりすれば、従業員も客も安心できますから。つまり、夜の街で感染者が増えたのは、彼らが積極的に検査に協力した結果なんです」(前出・都政関係者)
昭和大学客員教授(感染症)の二木芳人さんが言う。
「緊急事態宣言の解除以降、当時から夜の街に問題があるのに都は有効な手を打てず、感染が拡大しました。夜の街での集団検査にこぎつけ、感染者を把握できるようにしたのは、都ではなく新宿区や経営者らの功績です」
実際は、夜の街対策ほど簡単なことはない。元大阪府知事の橋下徹さん(51才)はテレビ番組でこう指摘した。
《補償をしっかり出す代わりに、営業停止をやる。それが政治の役割です。ボヤはボヤのうちに消さないと、一気に火が広がるんです》
限られた地域の、限定業種への補償は、いまの財政でも充分にできる。だが、小池都知事は「夜の街に行かないで」と呼びかけるのみ。そこには彼女の思惑が透けて見える。
「営業停止にしてしまったら、『コロナは夜の街だけで流行している』という言い逃れができなくなります。そもそも小池さんの政治手法は、次々に“敵”を作って勢いよく攻撃し、世間を味方につけるというもの。過去には、石原慎太郎元都知事や森喜朗元首相を悪者に見立てた。コロナでも最初はパチンコ店を敵視し、次が夜の街だったわけです。“敵は生かさず殺さず”が彼女のやり方です」(全国紙社会部記者)
医療ガバナンス研究所理事長の上昌広さんは「夜の街を見せしめにするのは2つの面で大きな問題」と指摘する。
「夜の街を袋叩きにしたら、『陽性になったらそこまで叩かれるのか』と思った人が、陽性がわかったときの非難や経済的被害などを恐れ、感染の可能性があっても検査を避けるようになる。その結果、感染はどんどん拡大します。経済活動を再開すれば感染者が増えるのは当然で、どの職種でもコロナに感染する可能性があります。それなのに夜の街だけ吊るし上げたら、ほかの本当に危険な感染拡大スポットを見落とす恐れがあります」