尖閣中国漁船衝突事件の船長釈放 前原元外相“菅直人氏が指示”証言

平成22年に尖閣諸島(沖縄県石垣市)沖の領海内で発生した海上保安庁巡視船と中国漁船の衝突事件から7日でちょうど10年。前原誠司元外相が産経新聞の取材に対し、当時の菅直人首相が、逮捕した中国人船長の釈放を求めたと明らかにしたとの報道を受け、ツイッターでは8日、「前原元外相」がトレンドの上位に食い込んだ。政権中枢の一人だった前原氏の証言に「これ、事実だとしたらとんでもねぇや」「けっこうな爆弾が炸裂したな」と多くのネットユーザーが衝撃を受けたようだ。

 事件は22年9月7日、尖閣諸島沖の日本の領海内で発生。中国漁船が海保の巡視船2隻に相次いでぶつかり、海保は8日未明に船長を逮捕した。その後、中国側はレアアース(希土類)の対日輸出停止や中国内での邦人拘束といった対抗措置をとり、那覇地検は24日、勾留の期限を5日残して船長を処分保留で釈放することを決定。那覇地検は理由として「日中関係を考慮」などと説明した。

 産経新聞の取材に答えた前原氏によると、国連総会に出席するための21日の訪米出発直前、首相公邸に佐々江賢一郎外務事務次官ら外務省幹部とともに勉強会に参加。その場で菅氏が公務執行妨害容疑で勾留中の船長について「かなり強い口調で『釈放しろ』と言った」という。当時の民主党政権は中国人船長の処分保留による釈放が「検察独自の判断」だと繰り返し強調し、政府の関与を否定し続けてきただけに、ツイッターには「いまさら‥‥」「今更何言ってんだよ。当時言え」という反応が目立った。

 前原氏が理由を聞くと、菅氏は同年11月に横浜市でアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議があるとして「(当時の中国国家主席の)胡錦濤が来なくなる」と主張。前原氏は「来なくてもいいではないか。中国が国益を損なうだけだ」と異を唱えたが、菅氏は「オレがAPECの議長だ。言う通りにしろ」と述べた。前原氏はその後、当時の仙谷由人官房長官に「首相の指示は釈放だ」と報告した、と報じられている。これには、「今さら驚かないけどあきれた」「終わっとんな」といった声が並んだ。「そら、見ろ!チャイナに忖度の『民主党』」「忖度どころの話しではない、無責任の極み」「これがガチの忖度ってやつかな?」というツイートも相次いだ。

 一方、事件から10年を経て証言した前原氏に対し、「この話を今になって出してくる理由の方が気になってしかたがない」と疑問を抱く人や、「まぁ、わかっていたけど、今これを言い出す前原さんに人望がないというのも納得。当時の民主党政権の幹部は国会議員を辞職するべき」と厳しい見方を示す人がいた。

 産経新聞の取材に「記憶にない」と答えたという菅氏に対しては、「あんだけ大騒ぎになった事を覚えていない、、って」と首をかしげたり、「『記憶にない』と言うことは事実やね。本当に腹立たしい」と批判したりするコメントが散見された。「検察の判断ではなく政治的な介入があった、と当時も言われてたけど、今年検察への人事がどうこう言ってた人たち、この時は政権握ってたよなぁ」とつぶやく人も。

 事件をめぐっては、官房長官だった仙谷由人氏(30年死去)は25年9月、産経新聞の取材に、菅氏の意向も踏まえ、船長を釈放するよう法務・検察当局に水面下で政治的な働きかけを行っていたと明らかにしていた。今回の報道で「なんだ、やっぱり検察主導ではなく政府主導だったんじゃないか」などと思った人が少なくなかったようだ。

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