自宅で仕事ができるのは便利ですが、家族が長時間一緒にいることで不協和音が生じるケースもあるようです。家事をしない夫への不満や、家に居場所がない「フラリーマン」の嘆きが聞こえてきます。 【図表】業界別や県別のテレワーク実施率 ▽子育てしながら仕事はつらい。家事しない夫にも不満 広島市安佐南区の会社員女性(37) ■夫婦ともテレワーク。娘(4)と息子(2)は登園自粛中。 在宅ワークって言いますけど、正直「ワーク」ができる環境じゃないですよ。この1カ月半、登園自粛の保育園児2人の相手をしながら、4人分の食事を作り続ける日々に疲れ切っています。「家族の時間が増えた」と前向きだったのは最初だけ。実態は、仕事の合間に料理や洗濯、掃除…。昼ご飯の準備も必要で、家事はむしろ増えました。 1人の時間も全くありません。ようやく「仕事に集中だ」と思っても、子どもはお構いなし。資料作りを一気に片付けたい時や電話をしている時に限って「ママー喉渇いた」「おなかすいたー」「うんち出たー」の声が響きます。ネットで動画を見ている間は静かですが、母としては「また3時間も見せてしまった…」と自己嫌悪になります。 家事が苦手な夫(43)は、完全に戦力外。「納期が近くて仕事が忙しい」と書斎にこもって私に丸投げです。夫の方が給料は高いけど私だって働いているのに…。 この間、「手伝ってよ」と部屋に入ると「ウェブ会議中だから」と邪魔そうな表情。掃除機をかけると「静かにして」。食事も残り物を出すと嫌そうな顔をされ、食卓をひっくり返したくなる衝動に駆られます。 さらに腹立たしいのは私の仕事に口出しすること。「エクセルの表が見にくい」「作業効率が悪い」と上司のような物言いです。「何もしないくせにうるさい!」という言葉を何度ものみ込みました。 テレワークで全てのバランスが崩れています。これまでは「会社では仕事」「帰宅したら母に戻る」と線引きしていたけど、今はどちらも中途半端。昼間に終わらず深夜や早朝に仕事をするから寝不足です。イライラして子どもに当たることもあります。これまでは実家の母を頼っていましたが、感染が怖くて今はそれもできません。 テレワークは子どもの世話をしながらはできない―が私の結論。通常出社になって子どもを預け始める6月1日を指折り数える日々です。 ▽居場所なく、ベランダに机。「出社当番」が癒やし 廿日市市の会社員男性(53) ■通信機器関連の企業。4月からテレワーク。妻と娘2人の4人暮らし。 家に居場所がなく、寄り道して帰るのが楽しみな「フラリーマン」です。自宅で仕事をするなんて、つらいご時世になったと思いますよ。主導権は妻に握られ、大学生と高校生の娘が中心の生活。会話も弾まず、肩身は狭いです。 娘たちは休校中だし、妻の習い事も休みなので、家の人口密度が高いんです。自分の部屋もありません。リビングで資料作りをしていたら「テレビ見るから」と、女性陣の邪魔そうな視線。すごすごと退散しました。 仕方なく屋外用の机と椅子を買ってベランダで仕事をしています。爽やかな風が吹くので案外悪くありません。自粛モードで仕事自体が減っているので、幸い忙しくもないですし。 家に比べて会社は快適ですよ。郵便物の仕分けや来客対応をする週1回の「出社当番」が癒やしです。周りの50代も似たようなもので、出番を募ると我先に手が挙がる。情けないですよね。 若い社員は在宅勤務になじんでいるけど、僕らは「モーレツサラリーマン」だった先輩の背中を見て育った世代。平日は終電まで飲み会やマージャン、週末は接待ゴルフが当たり前でした。長年、会社人間として過ごしてきたのに今更、自宅回帰しろと言われてもね。「早く飲みに行きたいなー」と、おじさん社員同士、ぼやいています。