居酒屋に行かないさとり世代は、どこで酒を飲んでいるのか?

“さとり世代”と呼ばれるいまの若者は、酒を飲まないと言う。20代の8割が、飲酒の習慣がないというデータもある。
まったく飲まないわけではなく、「習慣」となっていないだけで、友人とのコミュニケーションや家飲みでは、アルコール度数の低い酒を飲んでいる。祝杯やヤケ酒でがぶ飲みをすることもなく、“ほろ酔い”を持続させることを好むようである。
まさに、これが“さとり世代”の飲み方なのである。無茶をせず、“ほどほど”をわきまえている。企業戦士世代のおやじたちには、「物足りない存在」と映るかもしれないが、批判されるようなことではない。本人たちの人生観なのだから。
酒を飲まなければ、当然居酒屋へも行かない。すると、居酒屋には客が来なくなる。いまはおやじたちの楽園として、繁盛しているかもしれないが、次の世代がいなくなる。
必然的に居酒屋の数は減っていく。特にチェーン店の居酒屋は、厳しい状況になっている。チェーン店は、おやじたちが行くような個人経営の店とは違い、客層が比較的若い。若いグループでの利用が多いので、当然客は減っている。
居酒屋へ行くという行為は、本気で酒を飲むことを表している。つまり、本気で酒を飲まない若者は、別の店で軽く飲んでいるのである。
では、いまの若者は、どのような店で飲んでいるのか。
「ファミレス」「ファストフード店」である。
「ロイヤルホスト」や「ガスト」、「サイゼリア」などでは、随分前からアルコール類を置いて、夜の利用を促進している。リーズナブルな酒とつまみを用意して、仕事帰りの“ちょい飲み客”を取り込んでいる。
そこに追随するように、最近になってファストフード店が、酒の提供を始めている。
「バーガーキング」「フレッシュネスバーガー」がビールを扱い、「ケンタッキーフライドチキン」は、ビールとカクテルの新型店をオープンさせている。「スターバックス」まで、夜は“酒場”にして、利益を確保しようとしている。
面白いのは、「吉野家」である。2階客席のある店舗では、2階部分を「吉呑み(よしのみ)」という名の居酒屋として営業している。内装などはそのまま、昼間同様ひとり客を取り込もうとしている。
しかも、吉野家と同じく安い。枝豆150円。冷奴150円。ハムポテト250円。生ビール310円。チューハイ300円。角ハイボール350円(※店舗により料金は異なる)。牛皿、お新香、キムチがメニューにあり、吉野家らしいと言える。
ここも仕事帰りの“ちょい飲み客”を狙っている。
いずれの店もファストフードの限界を感じているのだろうか。確かに、ファストフードは夜の需要が落ち込むので、新たな収益確保の道として、酒の提供を始めたのだろう。
ファミレスやファストフード店で酒が飲めるのなら、居酒屋に馴染みのない若者は、当然そちらに行くだろう。
得意先の接待がなくなり、職場の飲み会も少なくなったいま、イヤイヤ飲みに行く必要もなくなった。
好きな時に気軽に飲めるファミレスやファストフード店に流れてしまうのは、仕方のないことである。
いずれ居酒屋は消えてしまうのかもしれない。特に、特徴のないチェーン店は、生き残りの策がない。
(佐藤きよあき)

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