食品加工業の田所食品(宮城県山元町)は、イチゴ果汁100%のジュースを開発し、今月発売した。イチゴ果汁は色や味の劣化が起きやすい特性があるが、冷凍技術を活用し、注文後に出荷する方式を導入することでカバーした。イチゴの味をそのまま楽しめる高級飲料として売り込み、東日本大震災で大きな被害が出た地元の特産品の消費拡大に一役買う。
「ストロベリーピュア100 しぼりたて」は東北一の産地として知られる同県亘理、山元両町産のイチゴを原料に使用。果実を搾って裏ごししたジュースを冷凍保存し、月2回、注文を受けた分だけ300ミリリットル瓶に詰めて発送する。
1本当たりに使うイチゴは1.2キロ。添加物を使用せず、糖度は10.7%と一般的なジュース(13~14%程度)より低い。イチゴ由来のピンクの色合いと酸味が利いた爽やかな甘みが特徴だ。
田所林一社長(67)は「イチゴ本来の味を堪能してほしい」と話す。ビタミンCやポリフェノールが豊富な点に着目し、健康志向の強い若い女性を主な顧客層に想定する。
イチゴ果汁は光や温度、熱、空気の影響を受けやすく、色や味の変化が早い。同社は試行錯誤の末、「化学的に劣化を抑えるのではなく、素材を生かした製造、販売方法を取り入れた」(田所社長)。基本的に通信販売に限定し、賞味期限を3カ月と短く設定した。
両町では、震災で約380戸あったイチゴ生産者の95%が被災。国の復興交付金による「いちご団地」の整備などが進み、現在は約210戸が営農を再開した。
田所社長は「イチゴは町の基幹産業。加工品で需要が拡大すれば、全体の価格安定につながる」と強調する。
価格は2本入り3240円、3本入り4860円。送料が別途必要。連絡先は田所食品0223(37)0439。